第5話

 フットラビットを10匹近く狩り終えた俺は部屋に篭もって10日後の昇格試験までどう自分を鍛えるかステータスプレートを睨みながら考えていた。


 そこで思い浮かんだのは憎き勇者の仲間である聖女マリナや聖職者が使う回復魔法。

 それは神の奇跡の力をもってして人を癒す魔法らしい。

 特に聖女マリナなどの神との親和性が高い者は神の力を一部借りれると言う。


 ならば話は早い。

 神の力を手にし更なる強さを手に入れる。


 そしてもっとも神の力を手に入れやすいのは恐らく皇立神聖女学園だ。

 そこは神を信仰するライドリッヒ皇国が建てた神聖な乙女たちが集い聖女を目指す者が集まる学園だ。

 遡る前の噂ではライドリッヒ皇国の皇立神聖女学園よりも神を信仰している場所は無いとまで言われていたくらいだ。

 さぞかし神に近い場所に違いないだろう。


 問題はどうやってその場所に入るかだ。

 名前の通りそこは女性しか入れない。

 考えられるのは俺が女になるくらいしか……。


 だがどうやって……。

 いや、もしかしたらできるかもしれない。


 俺は魔法空間からステータスプレートを出してクロニクルリベンジの効果を再び見た。


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効果Ⅳ:常に体力が0になり痛覚が無効化されないがデータの欄を何度でも自在に変更できる

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 これだ!

 データの欄と言われてピントこなかったが要するにステータスプレートのデータの横に並んでいる部分を何回でも変更できるってことだよな?


 ……だがここで俺が女になってその姿がリミナに見られたら俺は恥ずかしくて数日は顔を合わせられない自信がある。


 それに自分の外見も知っておかないといけないから人気のない水辺にいく必要があるな。


 ……と、なるとこの村から王都とは逆方向にしばらく行ったところにある禁獣の迷森きんじゅうのめいしんか。


 あそこにはAランク以上の魔物しかいない危険な上に一度入れば不思議な霧に惑わされて出られないと言う危険な森だ。

 そこなら人も寄り付かないだろうし誰か来ても大抵は魔物にやられるだろう。


 ふと窓を見るともう夜になっていた。

 俺は慌てて部屋を出て、魔法空間でしまっておいた昼間の残りであるフットラビットの残った肉と骨でスープを作り始める。


 ……しばらくして鍋からいい匂いを醸し出したところで加熱を止めて野菜(苦味少なめの薬草)を茹でる。


 ……しばらくしてこちらも加熱を止めて野菜(苦味少なめの薬草)を鍋に投入。


 あとは余熱があるうちに細かい仕上げをして出来上がりだ。


「リミナ、遅くなって悪かったが晩御飯ができた」


「……」


 リミナは俺を親の仇でも見るような目で見ていた。


「り、リミナ? 晩御飯が遅くなったのは謝るがそこまで俺が嫌われるようなことをしたか?」


「……やっぱり。変だと思ってたけどお兄ちゃんじゃないでしょ! 私のお兄ちゃんをどこにやったの!?」


 おいおいどうしてそうなるんだ!?

 もしかしてそんなに俺って嫌われてるのか!?

 それともあの時抱きついたのがいけなかったのか!?


「図星で声も出ないみたいね。お兄ちゃんをどこにやったか答えて!」


「目の前にいるだろ? どうしてそうなるんだ?」


「お兄ちゃんは……私のお兄ちゃんは、村人ってみんなに馬鹿にされながらも精一杯一人でボロボロになりながらもご飯を用意してくれるけどあなたは昼も今も無傷だった! 何よりお兄ちゃんはいつも自分のことを僕って言ってた! もう一度言うけどあなたは誰?」


「え?」


 もしかして今更だけど俺が嫌われてるんじゃなくて俺が偽物だって思われてるってことか?


「もしかしてだがリミナが怒ってるのは俺が晩御飯を作るのを遅れたことじゃなくて、俺を偽物って思ってるのか?」


「さっきからそう言ってるの!」


 え?

 本当に?


 ……一旦落ち着こう。

 つまりリミナは俺を偽物だと思っていて、その理由が今の俺の強さと一人称が「俺」ってことだよな?

 だが俺は俺だし本物のはずだよな?

 素直に未来から来たって言うか?

 だが信じて貰えるか?

 それこそ信じられない話だと思うがステータスプレートを見せても名前が同一人物の者が俺の姿に変装していると考えられたらもう俺を俺だと信じて貰えないかもしれない。


 なら答えは一つしかない。


「聞いてくれ。信じられないかもしれないが俺は30年後の未来からやってきた本物だ」


「そんなデタラメ信じられるわけない。それに、本物だとしてどうして過去に戻る必要があるの!」


 俺はステータスプレートをリミナに渡す。


「レベル100!? そんな力があれば誰だって勝て……」


「そんなことはなかった!」


 俺はリミナの言葉を遮って言った。


「そのレベルは魔王とは相打ちになって上がったレベルだ。魔王と相打ちになったことで焼かれた村の仇はとれたがリミナを殺した勇者は倒せなかった」


「……っ!?」


 リミナは驚きの表情を浮かべる。

 誰だって自分が死んだと言われたら当然かもしれないが。


「だが俺は……もう一度チャンスを与えられた。だから今度こそリミナを守るために、5年後にやってくる勇者より、一刻も早く強くならないといけない!」


「お兄ちゃん……!」


 気づけば俺は感情的になっていた。

 もしかしたら体の年齢に精神年齢が引っ張られているのかもしれない。


「だが……リミナが出て行けと言うなら俺は素直にここを出て行く」


「お兄ちゃん、疑ってごめんなさい! だから……お願いだから出て行かないで!」


 リミナはいつのまにか泣いていた。

 俺はリミナに歩み寄って誓いを立てた。


「リミナが望む限り俺はリミナの側にいる。絶対に」


「うん!」

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逆行村人の復讐〜この身の全てを掛けてでも〜 こんみっち @concon0114

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