好きだから
「と言う訳で、これもオマケで直してくれるよな?」
「・・・・はぁ、了解です。海斗兄ちゃんには、頭が上がりません・・・・」
「サンキュ。でも、チャーにばっかり、って訳にもいかねぇよなぁ・・・・おっ、ちょうどいい所に。朔っ!」
昼休みのオフィス。
ちょうど海斗の所属するチームとのミーティングを終えて会議室から出たところで海斗に呼び止められ、俺は海斗の席へと歩み寄る。
「なんだ?」
「このデータ、明日までにまとめておいてくれ。」
「は?何で俺が・・・・」
「あっれ~?お前にはでっかい【貸し】があるハズなんだけど?」
「・・・・分かった。」
(まったく・・・・)
海斗にギロリと睨まれ、俺は仕方なく海斗から渡された書類の束を受け取った。
「大丈夫?私、やっておこうか?」
「ダメダメ!【貸し】は朔にもあるんだし、一応『社外秘』データだからな。これでいいんだ。これで俺はラクができたし、お前らは上手くまとまったようだし!あー、今日もいい日だなぁ。」
満足そうに笑いながら席から離れていく海斗を見送ると、チャミはさっさと帰り支度を始める。
「早いな、もう終わったのか?」
「当たり前でしょ!さっ、私たちも、早くランチ行こう?」
言葉と共に向けられたチャミの笑顔は、俺のよく見知った、弾けるような笑顔。
「そうだな、偶には激辛でも食いに行くか。」
「・・・・私が辛いの苦手なの知ってて、なんで意地悪言うかな・・・・」
恨めし気な顔で上目遣いに俺を見るチャミに、俺はそっぽを向いて言ってやった。
「何でだろうな。・・・・好きだから、かな。」
隣で飛び跳ねるチャミの足音が、誰も居ないフロアに響き渡った。
BACK ME 平 遊 @taira_yuu
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