第11話 鴨肉うどん
私が鴨肉の美味しさを知ったのは、とある偶然の出会いからだった。
十数年前、祖母がお八つの時間に出してきた小皿の上に『それ』は乗っていた。
「これ、貰った鴨肉。良かったら食べてね」
小皿の上には五ミリ幅に薄めにカットされた鴨肉が3〜4枚と爪楊枝が添えられている。初めて見る、牛とも豚とも鶏とも違うお肉を恐る恐る口に運ぶ。今思えばおやつ代わりに鴨肉ってどうなんだ、と思わなくもないが、幼い私はそんなことは考えず、無心に与えられたおやつの鴨肉をモグモグと咀嚼する。そして驚いた。
口の中に広がるサッパリとした鴨肉の油と肉厚な歯触りはとてもジューシーで、他のお肉とはまるで違う味わいに深く心動かされたのを覚えている。
鴨肉の味でもう一つ思い出すのは、鴨肉うどんの話だ。
お店で頂いたもので美味しかったのは大阪の駅近にあったうどん屋さん。
とても混雑していたが時間に余裕があったので列に並んだ。
私はお出かけや旅行に出かけた際も、うどんを必ず食べる。
というかご当地のものを食べるのが1回か2回くらいで、あとはほぼ全てうどんでお腹を満たしている。今回訪れた大阪でもお好み焼きなどを食べる予定ではあるが、この時は『うどん屋』という赤茶色の暖簾につい惹かれてしまった。
話が少し逸れてしまったが、しばし後お店に入りメニューを開く。
初めて入るお店は何を頼もうかいつも悩む。ふと、鴨肉の入ったつけうどんに目が惹かれた。つけ麺自体を食べたことがない私は注文を決めた。
どんぶりの器には麺が1.5玉ほど(目測による)で、その横に置かれた器には熱々のつけ汁には鴨肉とネギがたっぷり入っている。
熱々のうどんがスープの味と手を繋いでいて、とっても美味しい。
鴨肉の油もしつこくなく、濃厚なスープと味がよく合う。
あっという間につけ麺の鴨肉うどんを完食して、店を出た。外には未だ行列が続いていた。忘れっぽい私がこのお店で出た箸袋の写真を撮っているので、また是非あのお店に行きたいな、と思う。
(因みに、肝心のつけ麺の写真は残っていない。写真撮るのも忘れて食べちゃったんだろうな……)
さらに鴨肉うどんはお店だけでなく、お家でももちろん味わうことができる。
自分で作る鴨肉うどんもまた楽しい。
冷凍の燻製鴨肉を解凍するために、袋ごと水に浸しておく。しばし時間を置き。
肉が溶けてきたタイミングを見計らい、お湯を沸かして袋麺のうどんを茹で始める。めんつゆを入れて、味付け。鴨肉を袋から取り出し、程よい厚さに切る。手が鴨肉の油でめちょめちょするが、仕方ない。これをうどんが麺を長くして待つ鍋に入れる。するとたちまち肉の油がつゆに溶け出し、きらきらとした透明の鴨肉の油が粒となりうどんの周りで輝きをちらせる。
お店でも自分で作ってもとても美味しい、鴨肉うどん。
熱々のスープまで完食するのがいつものルーティンとなっている。
冷えてきたこんな日に、あったかい鴨肉うどんはいかがですか。
うどんくるんちゅ。 藤井杠 @KouFujii
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。うどんくるんちゅ。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます