第8話 エピローグ

 翌日私は寝不足のまま学校に登校した。いつもは一緒に登校していたけれど、今日は課題をやらなければと嘘をついて断ってしまった。そのあとはクラスが違うこともあり、私と巧が会う事はなかった。そして、お昼休みになったので私は逃げるように教室から屋上へ行き、影になっているところに座る。考え事をするときや一人になりたいときに私はいつもここに行くのだ。私は昨日の事を再度分析する。幼馴染に惚れ薬を飲ませてみたが、いつもと態度が変わらなかったのはなぜだったのだろうか。



「巧君いきなり呼び出してごめんね。迷惑じゃなかった?」

「いや、どうせ暇だったから大丈夫だぞ。どうしたんだ、百崎?」



 考え事していると知っている声が聞こえてきた。しまった……告白と言えば屋上は定番である。このままでは盗み聞きになってしまうし、何よりも巧に彼女ができる瞬間なんて立ち会いたくないな……だけど入口近くは彼らが占拠しているため私は動くこともできない。私がどうしようか悩んでいる間にも彼らの会話は進む。



「あのね……巧君……ずっと、あなたが好きだったんです。よかったら私と付き合ってくれませんか」

「え……、俺? マジで?」



 震えた声の百崎さんと、驚いている巧の声が聞こえる。くっそ、なんで実況中継で片思いの幼馴染に恋人ができるのを聞かされなきゃならないんだ。その時ふと閃いた。この経験は、次の実験に活かせる……わけあるかー!! うう……なんでこんなことになったんだと絶望している私の耳に入った巧の返事は予想外のものだった。



「気持ちはうれしいよ。でも、ごめん好きな人がいるんだ」

「やっぱり、そうなんだ……それはあの子……?」



 え、巧には好きな人がいるのか!! 全然気づかなかった。一体誰なのだろう。もしかして私だろうかなどという愚かな思考が一瞬頭をよぎるが否定する。常識で考えて実験ばかりしていて迷惑をかけてばかりの女を好きになるなんて……



「ああ、ずっと一緒にいてさ、それまでは家族みたいだったんだけど、中学の時にさ、ちょっとしたきっかけがあって意識してそれから好きなんだって実感したんだ……」

「そっかー。正直そんな気がしたよ。巧君がんばってね」



 んん---!! 待った待った、ずっと一緒にいる女子というと……私しかいないよな……でも、中学の時に意識したっていうのは……私は昨日見たアルバムを思い出す。彼と少し疎遠になった時の態度を思い出す。あの時のあいつは目もろくにあわせてくれなくて……態度もつっけんどんになって……ああ、確かに恋の病の症状だった。



「ふぁぁぁ」



 思わず変な声をあげてしまった。つまり、昨日彼に惚れ薬を飲ませたが態度が変わらなかったのは……私は自分の体温が上がっていくのがわかってしまった。窓ガラスにうつった自分は顔をリンゴのように真っ赤にして、だらしない笑みを浮かべている自分の顔だった。

 そのあとの事は省略されてもらおうと思う。この後、私はなにも知らないふりをして、授業を受けて、放課後を巧と過ごした。そこで何があったかって? それを聞くのは野暮というものじゃないかな。まあその……恋人というのも悪くはないとだけ言っておこう。




----------------------------------------------------



これで完結になります。読んでくださった方ありがとうございます。


私はこういう天才少女とのラブコメが好きなんですよね。こういうキャラが好きな方は私の『初恋の幼馴染が催眠術を使ってグイグイと迫ってくるんだが』も気に入ってもらえると思うのでお暇だったら読んでくださると嬉しいです。


あと、今ハイファンタジーの追放物『散々利用され追放されたスキルトレーダーはスキルショップを開き成り上がる。用済みと言われたスキルは固有スキルや魔物のスキルも取引できるチートスキルでした。S級冒険者や王族の御用達になったのでもう戻らない』

も書いているので読んでくださったら嬉しいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

片思いの幼馴染に惚れ薬を飲ませてみたがいつもと態度が変わらない件について 高野 ケイ @zerosaki1011

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ