いつもパンツ見せてくれる事務員さん

ゆーき

第1話

 受付に来るお客は変な人が多くて大変だ。

 毎日毎日、キレたくなるのを必死で堪えて働いている。


 そんなボクの癒しは、常連の若い事務員さんだ。


 いつも既製品の制服姿。いわゆるマーメイドタイプのスカートを、昔の女子高生のように腰のところで折っているのだろう、膝上丈にしている。タイツではなく短い靴下など履いているので、それだけで艶めかしい生膝が拝めて素晴らしいのだが――重要なのはそこではない。


 彼女、少しばかりその……足元が無防備なのだ。


 彼女はいつも、ボクが座るカウンターから正面方向にあるベンチに腰掛け、順番を待つ。

 その、立ったり座ったりするときに、見えてしまうのだ。


 彼女のパンツが。


 もう少し膝を閉じるとか、裾を押さえるとかすれば、防げるのだと思う。おそらく、多くの女性がそのようにしているのだろう。


 ところが彼女、いつも仕事の荷物で手が塞がっているせいか、それともベンチが低いせいか……もしかしたら清楚な見た目とは裏腹に、ずっと粗雑な性格であるせいか。とにかくその瞬間、膝が開いてしまうのだ。


 そしてバッチリ、見えてしまう。


 腰を下ろしてしまえば、ピッタリ膝を閉じるので、ずうっと見せっぱなしというわけではない。


 しかし、その瞬間には確実に見える。そのタイミングを、ボクはすでに習得済みだ。彼女が来れば、ボクはその瞬間を、決して見逃さない。


 今日も見えた、バッチリ。色は黒。たぶん黒。黒なんじゃないかな。濃い色はスカートの影で見分けがつきにくい。とにかく限りなく黒に近い色だ。


 その一瞬のパンチラを、ボクは心に焼き付ける。その記憶が今日の僕を支えてくれるのだ。いや、あれはパンチラと言っていいのだろうか。モロに見えてしまってるんだけど。ただ見えてる時間は本当に一瞬だ。チラッ、だ。だからパンチラでいいんだろう。


 心の中で拝み、手元の仕事に戻る。


 実は、チャンスはもう一度ある。彼女が立ち上がる瞬間だ。立ち上がるために、足を踏ん張る、その一瞬に、やはり膝が開くのだ。きっとベンチの高さが絶妙なのだ。


 立ち上がるのは、彼女が呼ばれる瞬間。会社の名前で呼ばれるので、彼女の本名は知らない。でも、その瞬間を捕まえるためには、会社の名前を知っているだけで十分だ。


 呼ばれ、彼女が立ち上がる。

 やはり黒。セクシーなレースの模様が、今度ははっきりわかった。


 それにしても。

 散々見ておいて、なんだが。


 彼女、無防備過ぎやしないか。


 一度、立って座って、というサイクルで、二度も見せてくれるのだ。

 職場ではどんなことになっているのだろうか。


 無数の男があれを拝んでいる、と思うと、気分は複雑だ。

 どうせなら僕にだけ見せてくれればいいのに、などと、勝手なことを思う。


 教えてやったほうがいいのではないのだろうか、とも思う。

 しかし、なんと言って?


「あの、座る時、もう少し足元、気をつけた方がいいですよ。その、見えてますよ」


 とか言うのか?

 パンツを見ていたことがバレる。変態扱いされてしまうかもしれない。


 それに、彼女が対策してしまったら?

 見えなくなってしまう?

 僕の唯一の、日々の癒しなのに。


 そんなのは嫌だ。


 でも、もしかしたら。


 ボクの指摘を聞いた彼女は、頬を赤らめて、言ってくれるかもしれない。


「知ってます……わざと、見せているんです。に」


 えっ? それって……えっ? 僕に? 僕にだけ、わざとパンツを見せてくれてるんですか?


 それって……どうして?

 もしかして……もしかして、僕のこと。


「ねえお兄さん! 聞いてるの!?」


 いつの間にか現れていた、いつものクレーマーおばさんがカウンターをバンバンと叩き、ハッと、僕は妄想の世界から我に返る。


 やはり、言わずに黙っておこう。

 あのひとの見せてくれるパンツが、ボクの日々には必要だ。

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いつもパンツ見せてくれる事務員さん ゆーき @yuki_nikov

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