まずはじめに、「僕マルケス、転生して全盛期ロッシに挑みます」を書くにあたり、たくさんの協力をいただきました。こんなところでなんですがお礼申し上げます。
資料や当時の情報等、提供してくださった方はたくさんいて、一人ひとりお名前を上げるようなことはできませんが、タイトルのアイデアをくれたMさん、主人公の名前について相談に乗ってくださったTさん、貴重な当時の映像資料を惜しみなく提供してくださったもう一人のTさんについは、特に感謝を述べたいと思います。ありがとうございました。
以下どうでも良い話。
このお話、もともとTwitterで出てきた冗談でした。マルケスが全盛期のロッシと戦っていたら、果たしてどうなっていたのか。
当然、現実ではそんなこと確かめようがないのですが、現在の”転生モノ”ブームよろしく、もしもマルケスが90年代の終わり頃に転生したらどうなるか…?
思いついたのは、98年頃に行われた、モビスター・アクティバ・カップ、詳細は不明なれど、スペイン人ライダー新人発掘オーディションとされるこのイベントで、ダニ・ペドロサが後の師、アルベルト・プーチ氏に見出されるのは有名な話。
もしも転生したマルケスがそのレースにいて、若手ライダー達を無双してしまったら。
プーチ氏その他のスペイン人指導者たちが見逃すはずはないでしょう。しかし、当時、そのような若手スペイン人ライダーをトップチームで走らせる力は、スペインあたりではちょっと見当たりません。だったらプーチ氏がストーナーにそうしたように、みんな知ってるLCRに放り込み、WGPに参戦させたら?
そこまで思いついて、冗談で書いたのが冒頭五話、プロローグ〜第四話までになります。ぶっちゃけここで、ボクとしては満足していて、続きを書くつもりはありませんでした。
ところが、ここまで読んでくださった方が、まあまあポジティブな反応だったのですよね。
最初は思いつきでしたが、この時期を舞台にするのは、なかなかおもしろい題材だなとすぐに考えついていました。
99年GP125のチャンピオンは、マルケスの師匠であるアルサモラさん。彼の伝説的な「未勝利でのタイトル獲得」を邪魔することになります。
00年GP250は、日本人三人がタイトル争いに絡む伝説的シーズンで、最終的にジャックが勝利してタイトルをかっさらうところも含めて完璧です。
そして01年GP500。500ccのみで争われる最後のシーズンにして、覚醒したロッシの伝説を彩る最初の最高峰タイトル獲得。
ここにマルケスを放り込んだら…最高に面白い題材です――妄想するだけなら!
それを小説として形にする? 正気の沙汰とは思えません。
特に今回はタイトルで「全盛期ロッシに挑む」「全盛期ロッシvs全盛期マルケス」って言ってますから、特に、その他のライダーを無双することは決定しています。
そんなもの読みたいか?
そもそもこのプロローグ、これもしかしてマルケスタヒんでるのか? なんて不吉な……
お世辞だとはわかっていても、わざわざアカウント作って応援押してもらうと、じゃあもうちょっと書いてみようか、というような気になってしまい――
しかしそもそもあんまりちゃんと書くつもりがなかったのは、プロローグでわかってもらえると思います。描写が面倒くさいので徹底的に手を抜きたかった。その後も頻発することになる、テレビ中継の実況風のやりとりはそのためです。手抜きの割には面白くなったと思います。MotoGPファンなら「これは実況だな」とわかれば話し方は自動的に脳内再生されるだろうし、レース映像も脳内に浮かんでくれるだろう、と。
せっかく書くんだったらもうちょっと物語としてなんとかならんかな、と思い、マルケスが無双するだけにならないように、お話を少し考えてはいました。
例えばGP125では、マルケスの影響でメランドリの覚醒を早めてしまいます(この年のポイントスタンディングを見てもらうとわかりますが、メランドリがフランス、オランダ、イギリスあたりでもう一つ前でフィニシュしてれば、タイトルはメランドリでした)。後半はvsメランドリでクライマックスへ、とか。
250では、同じマシンに乗る加藤の覚醒を促し、ヤマハの二人も含めて四つ巴の死闘になるとか。
マルケスという破格の才能の登場が、時代の名選手を更に向上させてしまうのです。
全部ボツにしました。書くのがめんどくさくなったからです。メランドリや加藤がちょっと頑張るシーンが残ってますが、その名残です。気づかないよね。
とにかく、レースシーンを書くのがひたすらめんどくさい。ボクはサーキットでスポーツ走行した経験はないので余計に書けません。
「タイトルで謳っている以上、ロッシとは対戦させねば……」その一心で書きました。
オチも、当初はあのようになる予定はありませんでした。
あのオチも最初の頃、Twitterで誰かが言ってたネタでした。誰かがすで言ってしまったからというのもあったんですが、ロッシも転生してると明らかに泥沼になるし、そもそも「転生モノ」としてあまりにもベタです。ボクは転生モノで主人公以外に転生者がいる展開はあまり好きではないのです()
2001年シーズンのラストが、オチになる予定でした。
全盛期ロッシ、と銘打ったものの、01年は、ロッシがその伝説をスタートさせる年で、彼の全盛期はこれ以降になります。
一方のマルケスは、すでに最高峰を7シーズン戦っていて、そのうちの6回でタイトルを獲得しています。ライディング技術も20年先を行っています。
書き始めたあとに気づいたのですが、この時期だと、どうしてもマルケスのほうが有利になりそうだと思ったのです。
だから最初の予定では、01年中盤までに500の乗り方をマスターしたマルケスが、ロッシ(もちろん転生してない)を下しタイトルを獲得、しかしマルケスは、上記の理由で、これがフェアな戦いではなかったと考える、そこで次の02年シーズン、マルケスはヤマハへの移籍を発表し、終わり…というのを考えていました。
「これが本当のロッシへの挑戦になるのだ」とかなんとか宣って。
マルケスがあの時代のM1を開発したら――というのもまた面白いネタでしょ、妄想するだけなら。
ロッシのようにできるはずはないけど、マルケスは、そのあとMotoGPマシンがどうなっていくのか知っているんですからね。きっといい勝負になるのではないでしょうか。
まあそれはそれ。
思っていたよりたくさんの方に読んでいただけたようです。最初はせいぜい、読んでくれて十人ぐらいだろうと考えてました。TwitterのGPクラスタでちょっと広まってくれたみたいで、そのせいかと思います。
PVも多かったしリアクションももらえたのでその点は嬉しかったのですが、個人的にはポジティブな気持ちは半分。
自分で、面白いモノを書いている、というつもりがなかったのですよね。
色々勉強になりました。たぶん結果として、Web小説として、PVしやすい形になったのでしょう。でも、自分としては不本意だったのです。
アップするたびに「またクソ文章書いてしまった」と思ってました。
推敲どころか、読み返しすらほとんどしなかったのです。誤字、脱字、誤変換、表現間違い、重複表現、ありとあらゆる作文の間違いが詰め込まれてると思います。
自分では気づいているんですけど、設定的にいなかったはずの選手がいたりすらします。でもたぶん気づかれないと思うんです。その程度のものですからこの作文は。
やろうと思えば、もっと徹底的にやれたんだと思います。当時のビデオちゃんと見て、何があったのか確認して、マルケスの実際の活躍と織り交ぜて、とか。
ビデオ、資料、アドバイスをたくさんいただきました。書けたのはそういったTwitterでの協力があってのことです。
でももう書きたくなかったんですよめんどくさかったから。
それに、ボクがそれを追求しても、面白いものにはならなかったというのもわかるんですよ。
ライブ感と勢いとラフな文章が、読んでもらえた最大の理由ですよ。
書きたくないなりに、なんとかオチを付けたかった。そのために、ああいう形にしました。
「開幕戦鈴鹿で終わる」
それを思いついたときには、嬉しかったです。
やっと終われる、という気持ちと、なにより「ロッシvsマルケス」に真の決着を付ける必要がないと気づいたからw
01年鈴鹿はロッシが勝たないといけないんですよ。じゃないとロッシの最強伝説がはじまらないから。この段階でロッシは昨シーズンランク二位ですが、二勝しかしてないのです。タイトル候補でしたが、2シーズン目の若きイタリア人ライダーは、何人もいるタイトル候補の一人に過ぎませんでした。
協力者のおかげで、01年開幕戦鈴鹿はフルレースビデオがありました。日本語の実況のものですよ最高です。解説に岡田さんと坂田さんといました。最高ですよもう。
そこで、鈴鹿は徹底的にやることにしました。マルケスが絡んだところを除けば、ほぼ当日通りのことが起きます。書くために何度も見返しました。
同じことを年間十何戦もできません。
でもこれがラストなら、できる。
そういうつもりでなんとか書き切りました。
だからすいません、最悪の方法で上げたモチベーションで書いたし、自分で面白いものを書くつもりもありませんでした。
こんなんここですら書く必要はなかったんですけど、「続きが読みたい」という言葉をいただきまして、それで我慢できず。
面白かった、もっと読みたい、というのは、書き手としてとてもうれしい言葉のはずなのですが――まさかこんな気分になるとは。
書きたくないもの、自分が面白いと思わないものに言われてしまうと、ダメージになるんですね。
これを書くことは、たいへん勉強になりました。
これ以前、結構面白い文章が書けるかもしれない、とちょっと思ってましたけど、完全にへし折られました。意味合いがちょっと難しいんだけど、
「自分が面白いと思うものを面白いと思うひとがこの世にいるかもしれない」
を期待していたのに
「自分が面白いと思って書いてないものを面白いと言ってもらえる」
のがダメージになってるんですよ。
なんでそんなんなりながらも書き続けたのかって、そりゃあPVですよPV。
あと応援ね。
しかしPVってのは効きますね。
それまで10とかあると飛び上がるように喜んでたのに、更新日は三桁当たり前なんすよ。
最終話アップした日は1,500ぐらいありましたね。トータルでこれ書いてる段階で16,000でした。
まあ小分けにして出してるんでPV伸びやすいってだけなんですけど、それでもアップした話数の数十倍のPVがあるとね。
麻薬みたいなもんすよ。書くモチベーション上げる麻薬。
読んでくださってる方がいて、その方々に面白いと思ってもらえた、それはとてもうれしいことです。ありがとうございます。面白いと思えるものを書けてよかった。
でもとても辛かったので、ボクはマルケス転生に関しては、もう終わりにします。
マルケス転生を書いていたあいだ、書きたかったものを書けなかったんですよ。時間的な意味ではありません。原稿に向かっても手が動かなかったし、書けたものを読んでも面白いと思えなかったんすよ。
何が面白いのかわかんなくなっちゃった、みたいな。
まあそういう、愚痴みたいなお話でした。
こんな駄文を最後まで読んでくださりありがとうございました。
次はチキンライダーか、もしくは悪役令嬢モノでお会いしましょう。