ひねくれ魔物使いは諦めない。

玉城裕次郎

第1話 出会い

「おいアレン?ホントにこんな山奥にお目当ての奴はいるのかよ?」


「ああ。間違いないよ。被害に遭った冒険者達が襲われた場所は

みんな口を揃えてこの山奥っていうからさ。」


「でも、さすがに疲れたね。足場は悪いし、霧も出てきて視界は悪いし。

ねぇ、マーリン?体力大丈夫??」


「うん、ありがとうミラさん。まだまだ大丈夫だよ。みんなの足を引っ張るわけにはいかないからね。」


「ん~~っ、健気に頑張るマーリン可愛い~。さすが私の天使。愛してる~。」


「ちょ、ちょっとミラさんくすぐったいですよー。」


「良いではないか良いではないか~。

私はマーリンを弄ることで心も体も癒されるのだよ~。」


「弄るって言っちゃってるよミラさん。ほどほどにしてくださいね。

・・・ん?ガレスどうしたの?」


「今、あそこに見える開けた所で人影が見えた・・・でもおかしい。魔物であればこの距離でも気配で気付くのに今のは気配が無く、目視じゃないと気付かなかったぞ。」


「それは怪しいね・・・でも僕達には前進するしかない。追うぞみんな。」


「「「了解」」」


4人は人影を追うべく走った。



僕の名前はアレン。

この世界は魔物、それらの頂点に君臨する魔王も存在している。

それらに対抗するため、

生まれると同時にそれぞれ神から与えられたとしている『才能』というものがる。


『才能』は様々ある。

ちなみに僕とガレスは筋力の才能がある為、戦士として。

マーリンとミラさんは魔力の才能がある為、

回復援護術士をマーリン。攻撃専門術士をミラさん。

この4人でチームを組んで冒険者となり様々な依頼を達成していった。


僕達がこの山奥に来た理由は、ここ最近他の冒険者が一人の青年から襲われ、

金銭を奪われているという事件が起こったため、依頼の元、僕達が調査に来たのだ。


犯人と思わしき人影を追いかけた僕たちは、広い平原にて追いつくことが出来た。


「はぁ、はぁ、やっと追いついたぜこのヤロー!ちょっと話をしようや兄ちゃん?」


ガレスはチンピラ風に青年に問う。

ガレスは根は優しい。

しかし、舐められない様にと初対面の相手には威圧的な態度をとってしまうという悪い癖がある。


「・・・。」


しかし、青年は答えない。こちらには背を向けて空を眺めている。

その行動にガレスは感に触ったのか、


「てめぇ・・・せめてこっち向けやぁぁーーーーー!!!!」


ガレスは所持している大剣を振りかざしながら、大声を上げ、全速力で青年の元へと向かっていった。


「まてガレス!!!やめろ!!!」


ガレスの感情的な行動に後れを取った僕は急いで走り出す。

しかし出遅れてしまった事でとても追いつける気がしない。

やばい、いやな予感がする。


ガレスの大剣が青年に振り下ろされた瞬間に見えてしまった。

黒の髪に若干茶色の入った目。悪戯が成功したかのような悪い笑顔。

上がった口角から発せられた言葉を口の動きから読んでしまった。



           『ば~かっ』


その瞬間、いきなり足元から身長2メートル程の巨人が出てきて、ガレスの大剣を受け止めた。


「!!!っ。なんだこいついきなり!!動かねぇ!!」


「・・・ゴーレム・・・飛ばせ。」


その言葉を合図に、巨人はガレス諸共大剣を投げ飛ばした。

ガレスは飛ばされた先にあった木に背中から当たり、座り込んだ。


「ガレス?!!マーリン回復を!!ミラさんは援護をお願いします。」


「わ、分かりました!!」

「了解よ!」


俺は青年を無力化にしようと突っ込んだ。


「はぁ~。毎度毎度お前ら冒険者はいきなり襲ってくるね~。血の気多すぎるんじゃないの??」


青年はやれやれと両手を広げて、首を左右に振る。

そのあと怠そうに俺を見据えると、


「・・・ま、いつものように無力化して帰ってもらうか。ゴーレム、やれ。」


巨人は俺に向かって大振りの拳を出してくる。

俺はそれをスライディングして、搔い潜り、青年へと片手剣を振り下ろす。

しかし、その剣は届かなかった。何故なら、


「お~っ、びっくりした~。危うく怪我するとこだったよ。ありがとリザ。」


いきなり足元から現れたリザードマンの片手盾により防がれた。


リザードマン。

ドラゴンの分類にされる魔物。

体はドラゴンのような鱗で覆われており、二足歩行で立ち武器を使用する。


「・・・主人に傷をつけようとする輩・・・万死に値する。」


リザードマンはもう片方の手に握っていた片手剣を僕に振るって来たので、後方にステップを踏んで回避した。


「アレンっ!!!!!どいて!!!」


俺はミラさんの声を聞き、すぐさま横に避けた。


「ファイアーボール!!!」


ミラさんの放った魔法、火属性ファイアーボールは青年目掛けて飛んで行った。


「おーなかなかの威力だな。でも・・・ゴーレム。」


巨人は火の玉を片手で受け止めた。


「!!!冗談じゃないわよ。今までたくさんの魔物を屠ってきた魔法よ。それを片手だなんて・・・」


「熱!熱!余熱熱い!!ちょ、ゴーレム!水持ってきてー!」


俺は青年が、魔法の余韻で苦戦している間にマリさんの横まで後退した。


「何なのよあいつら・・・。どうするアレン?いったん引いた方が良さそうだけど?」


「そうだね。俺が殿を務めるからミラさんはマーリンとガレスを連れて・・・?!!」


俺はマーリンとガレスに目をやるとナイフを咥えた狼が、

マーリンの首に刃を当てていた。


「「マーリン?!!!」」


「ア、アレンさん・・ミラさん・・・ごめんなさい・・・。」


不意のマーリンの危機に俺とミラさんは冷静差を失い声を上げてしまった。


「はーい動かないでね~。動いたらうちの狼ちゃんがマジでナイフ当てちゃうからねー。・・・熱かった~。」


頭から水を被ったのか?青年の髪から水滴がポツポツと落ちている。


「くっ!!・・・僕らの負けだ・・・。頼む、抵抗しないから仲間に危害を加えるのはやめてくれ。」


「んー・・・ならいくつか俺の質問に答えろ。」


「っ・・・分かった。」


「先ず、此処に何しに来た?」


「ここ最近、冒険者がこの山で襲われて金銭を奪われるといった事件が多いらしく、

その原因を探り、解決する依頼を受けて僕達は此処に来たんだ。」


「なるほどね。・・・それで俺を犯人と思った大剣男はいきなり襲ってきたわけね・・・

で?、あんたも俺を犯人と思ってるわけ?」


「・・・正直僕も思ってる。襲われた冒険者はそれなりに腕も立つ冒険者もいた。

君は、・・・いや、君達はその冒険者達より遥かに凌駕する力があると見えるからね。」


「ふむふむなるほど。」


「しかし、君達のように人間と魔物が協力していたなど情報はなかった。・・・

教えてくれ。君が冒険者を襲った犯人なのか?」


僕が質問を投げかけると青年は口角を上げニヤリと笑う。


「ふっふっふ・・・お前らの質問答えてやろう・・・耳の中掃除してよく聞けやぁー!!!!

犯人はお「我らではないぞ。」リザァァァァァー??!!!!」


「最近この山の麓に住みだした人間達であろう。・・・見た感じ貴様ら以上の実力者たちであったしな。」


「ちょっとリザさん?俺のセリフとったうえに真犯人まで教えちゃうの??

ものすっごいドヤ顔準備してた俺の気持ち返してよ??ねえ聞いてる?」


「!!・・・そうか、前に冒険者上がりの盗賊集団がいると聞いたことがある。おそらくそいつらが

真犯人だ。」


「あれ?俺の事はスルー?あんた俺と話してたのに、急にリザと変わってもスルーなの??

なにあんた?対応力高くね??ちょっと俺の話聞いて!?」


「恐らく奴らはまだ麓にいるだろう。・・・我らの相手をしていないでさっさと行け。」


「・・・」


「そうだね。誤って攻撃してすまない。盗賊を片付け次第改めて謝罪させてくれ。・・・

ミラさん、マーリン、ガレス、行けるかい?」


「ええ大丈夫よ。」

「はい。私も行けます。」

「ああ。まだ体が痛えが行けるぜ。さっさと片付けようや。」


「よし。じゃあ盗賊の元へ行こ「ちょうぅりゃぁぁぁー!!!!!!」」

「グハっ!!!」


青年の飛び膝蹴りが顔に当たって僕は吹っ飛んだ。


「「「アレン?!!!」」」


「い、いきなり何をするんだい?!僕達はもう君達に危害は加えな「いや加えてるから?!現在進行形で加えまくってるからね!!お前らとリザが一緒になって俺に精神攻撃してるからね?!」


「まぁ主人よ、落ち着きなされ。この者たちは他の者と違い話が分かる。手荒な真似をしなくてもよいだろう。」


リザードマンが僕達の味方?になり青年をなだめようとするが、


「お前が言うな、裏切りトカゲ。お前の晩飯は今日は無しだからな。」


「ぬ?!!そ、それは横暴であるぞ主人よ?!!」


「やかましいぞこの野郎。主人のガラスのハートを削ったお前には良い罰だ。」


「しゅ、主人の器の狭さには呆れたぞ?!!こんな小物と知っていたら仕える事はなかった。」


「な?!言いやがったなトカゲ野郎ー?!もう頭に来た!」


どんどん僕らを置いて、目の前で熱くなっていく二人。


「決めたぞリザ。お前の飯は当分干し草だ!!そしてお前の目の前で、毎日、毎日、

お前の大好きな焼き鳥を食べてやるからな!!ハーッハッハッハ!!」


「な!!!!・・・・・」


青年が宣言すると、リザードマンは驚愕し剣と盾を地面に落とす。

どうやら青年は罰と称してリザードマンの好物を目の前で食べるという嫌がらせをするそうだ。

これは何とも・・・


「「「「子供・・・」」」」


僕達が同じ感想を述べるとリザードマンは体をワナワナと震えだして


「・・・しゅ、主人の・・・陰湿最低ひねくれ者ー!!!」


リザードマンは涙を流しながら拳を作り、青年に向かって走る。え、涙?


「お、やるかこの野郎?!主人に逆らうとは良い度胸だ!!これを機にどちらが上かもう一度教えてやろう!!」


青年は口角を上がり格闘家のように構えて、迎え撃つ準備をした。


完全に蚊帳の外となった僕達は盗賊との戦闘準備のために準備を始めた。

僕は武器の刃こぼれが無いかチェックを。ガレスは怪我の回復のためポーションを、

マーリンとミラさんは魔力回復のためエーテルを飲む。


「うしっ、これで準備完了だ。さぁ、盗賊共をさっさと狩りに行こうぜ。」


「ええ。魔力も回復したしね。マーリンも大丈夫?」


「はい!!いつでも行けます!次こそ皆さんの足を引っ張らないように頑張ります!!」


「あんまり気を張りすぎないでねマーリン。

さっきのは僕らも全く反応できなかったから落ち度はこっちにもあるよ。」


「は、はい!それでも、、、頑張ります!!」


「ん~マーリン可愛い~。そうね、一緒に頑張りましょう!」


ミラさんはマーリンに抱き着く。


「わ、わ、ミラさん恥ずかしいです。」


「おーい。女同士のユリユリは盗賊退治してからゆっくりしよーぜー。」


先に歩き出していたガレスが呼びかける。


「ガレスの言うと通りね。続きは終わってからにしましょうね、マーリン。」


「はい!!」


ミラさんもマーリンも歩き出したところで僕はチラッと青年達の様子を見る。


そこには、

涙を流しながら青年の頭を噛んでいるリザードマン。

同じく涙を流し、一生懸命リザードマンを剥がそうとしている青年。え、涙?

その二人の周りであたふたしてるゴーレム。

少し離れた場所で眠りについてる狼。


「・・・彼らは一体・・・」


気になる疑問があるものの、僕は仲間たちと一緒に盗賊達の元へと向かった。

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ひねくれ魔物使いは諦めない。 玉城裕次郎 @tamadora

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