絶妙なバランスのうえに成り立っている力作

 奇抜なアイデアから生み出された、オリジナリティがあふれすぎている「異世界」の物語でありながら、読み手を置いてけぼりにしないように工夫された文章により、非常に読みやすい作品となっている。
 作者はさぞかし苦労しただろうが、それに見合うクオリティの小説になっている(その質に対して評価が追いついていないのは、一読者として少しさみしい)。
 特筆すべきは、固有名詞の選び方の巧みさである。この工夫により、ぐっと読みやすくなっているだけでなく、寓話的かつ神話的な雰囲気を作品に与えている。
 その上で諸々のバランスをはかり、寓話的過ぎず、神話的になり過ぎない配慮もなされている。

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