人と豚のハルマゲドン
みらいつりびと
第1話 プロローグ
遥かなる過去に神が創造した生き物たちは次々と絶滅への道を歩んだ。そしてついに、地上に残された生き物はヒト、ブタ、キャベツの三種のみ、という時代が到来した。
人類にとって、豚とキャベツの管理が最大の問題となった。殊に、豚の数を調整することが重要だった。放置しておくと豚は勝手に増え続け、キャベツを食い尽くしてしまう。
すべての豚が牧場に追い込まれ、厳重に管理されるようになった。地上は圧倒的に広がる砂漠と、豚牧場、キャベツ畑、そして人々の住む町、とシンプルに色分けされた。
豚の管理体制が確立してから、自然と豚牧場の主が権力を握るようになった。彼らの供給する豚によって、人々は生かされているのだ。権力はより多くの豚を所有する者に集中していった。
豚をめぐって、いくつかの大きな戦争が起こった。その争いが終結したとき、豚の所有者イコール権力者という図式はますます明瞭になっていた。広大な豚牧場を持つ者が、国王として民衆の上に君臨するようになったのである。各国王は、彼の持つ豚牧場の規模に相応な国民と国土を保有した。
最強の国王は、ユーラシア大陸西部に茫洋と広がる世界最大の豚牧場を有し、実に大陸の六分の一を領有する豚王国の王であった。代々「豚王」と名乗るこの強大な国の君主は豊かな豚牧場ばかりでなく、百万の軍隊を握っていた。人口の激減したこの時代においては、圧倒的な軍事力である。
まさに超大国であった。その力は他国を懸絶し、豚王国と敵対できる勢力は地上に存在しない、と言われていたのである。
人類の天敵、野豚の大逆襲が始まるまでは……。
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