神話

私製創世神話

 まず、無から神が生じたが、そのいきさつはわからない。


 やがて、神は混沌の世界を生み出したが、混沌は光と闇が入り混じる、落ち着かない世界であった。


 不完全ながら世界ができると、神は眠りについた。

 すると、その口から清らかな水があふて、太古の海が生まれた。


 きゅうとも思える時が流れたのち、水辺から一匹の蟹が現れ、神の体を切り刻み、大地の形を整えた。

 撒き散らされた神の肉片は、石や木や花などになった。

 仕事を終えると、蟹は海へ帰っていった。

 ぼろぼろになった、両の鋏を大地に残して。


 蟹が去ったあと、両の鋏は姉弟の狐に変じた。

 二匹は体を交らわせ、さまざまな生き物を生み出した。


 姉弟の狐は世界を生き物で満たすと、最後に神の残骸をこね、人間の男と女をつくった。

 それから、姉狐は神の目玉を空に投げ、月とした。

 弟狐も真似をして、もう一つの目玉を空に投げた。

 それは太陽なった。

 このために昼夜が生じ、生き物の成長と死が始まった。


 役目を終えた姉弟の狐は、二匹の蝶に化け、どこかへ飛んでいった。

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短編集「奇漁」 青切 @aogiri

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