第19話
親父が死んだ。
直ぐに葬式が執り行われ、あっという間に親父は燃やされ煙になった。
葬儀には、沢山の人が来た。
枢木白虎の言ってたことはどうやらあながちホラでもなかったらしい。
みんな、親父には仕事で助けられたと涙ながらにお袋に頭を下げて回った。
その様子を見て白虎はどこか誇らしげだった。
俺も、まぁ、悪い気はしなかった。
「おめでとう、就職決まったんだって?」
煙になった親父をボーっと見ていると、白虎が話しかけてきた。
「まぁ、近所のスーパーの品出しバイトだけどな」
あの後俺はバイト求人誌に片っ端から電話をかけたが、年齢を言った途端面接もさせて貰えず門前払いされ続けた。
いよいよダメかと心が折れかけた時、偶々出掛け先のスーパーで求人広告を見て、店長捕まえて土下座で泣き落とし、何とかバイトで雇ってもらえることとなった。
「頑張れば社員昇格もあり得るってさ」
まだ就職して6日目だが、今のところはパートのおばちゃん達に弄られながらも雰囲気良くやらせて貰ってる。
「そっか、ありがとう」
「何が?」
「最後に、親孝行してくれて」
「聞いてたか分かんねえけどな」
「ちゃんと届いたさ、きっと」
俺が就職を決め喜び勇んで親父に報告に行った時、親父は既に危篤状態だった。
俺は手を握って親父に報告したが、目を一度薄ら開けただけで、後は死ぬまでずっと目を開けなかった。
「きっと慶君が心配で、中々あっちに逝けなかったのね」
お袋は涙ながらにそんなことを言って笑っていた。本当に最後まで心配性だな、親父は。
「それじゃあ、仕事があるのでまた」
そう言って白虎は踵を返した。
「ああ、元気でな」
また、とは言ったがきっともう二度と会うことは無いんだろう。
微かに友情のようなものを感じなくもなかったので、少しだけ寂しい気持ちもなくもなくはないが、きっと大人同士の友達付き合いなんてものはこんなものなんだろう。
まぁ、友達なんていたことなかったからわかんねぇけど。
「あ、最後に」
ピタリ、と白虎はこっちを向いて顔だけ振り向いた。
「僕のレッドアロンダイト号に10円傷つけたのって君じゃ無いよね?」
ワロタwww
お前も心の中にジャンプ飼ってんのかよwww
──
煙突から煙が出なくなった。
親父の骨を骨壷に詰めるので親族の方は集まって下さい、と係の人に呼ばれる。
─じゃあ、アタシももう行くわ─
慶子が急にそんなことを言うと、足元からすぅ、と光に溶けて消え去っていく。
慶子、お前 消えるのか─?
てかお前、俺の妄想じゃ無かったの?
それじゃ、本当の幽霊だったってこと?
─さぁ、そんなのもうどっちでもいいじゃ無い?─
良くない!良くないよっ!消えないでくれっ!
頼む!頼むよ!
俺が悪かった!済まなかった!謝って許されるようなもんじゃ無いのは分かってるでもごめん!
頼む、消えないでくれ!
妹はもう、胸から下が消え、顔も薄ら消えかかってきた。
待ってくれって!待って!まだ謝り足りないんだっ!!っ御免なさい!御免なさい俺のせいでっ!!!俺が全部悪かったんだ!!
許してくれっ!!!
ごべんっ!な゛さ゛い゛っ!!!
─いいよ、 家族だもんね─
そう言うと、妹は光に溶けて、今度こそ跡形も無く消え去ってしまった。
「慶君?」
背中から声を掛けるお袋を心配させないように、
俺は袖口で涙を堰き止める。
きっと妹は本当に俺の都合の良い妄想で、俺は自己正当化の為にまた妹を利用したクズ野郎なのだろう。
それでも、俺はこの重い罪の十字架を背負って、報われない贖罪の道を歩み続ける。
見上げると空は雲ひとつなく、青い青い大きな冬空だった。
─さぁ、行こう。
─俺の人生という名の戦いは、まだ始まったばかりだ。
了
Family Wars 〜高級官僚を親に持った俺は悠々自適にニートライフ!今さら社会復帰してくれと言われてももう遅い!!妄想で具現化を果たした嫁奴隷と共に親の脛を齧り尽くして生きていく〜 生田 内視郎 @siranhito
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