第18話

─アンタ、いい加減にしなさいよ─

妹が頭を抱えてため息をついた。


う、だって、しょうがないじゃん。

引きこもりで運動不足の俺にいきなりアレは無理だって。


俺は今、白虎君に紹介してもらった仕事を三時間でバックれ、帰りの電車に乗り込んでいる。


ゴールドバックラーの称号、ゲットだぜっ!!!


スマホがいつまでも鳴り止まないので白虎君に『すまない』とだけLINEを送り、『根性なしが』と返信が速攻送られてきたのを見てスマホの電源を落とした。


はぁー、疲れた。

電車が揺られるのに合わせて体が芯を失い、ぐらぐらと揺れる。


まーたやっちまったなぁ、


俺は一体何度自分自身を裏切れば気が済むのか


大きな川を横断し、太陽の光がキラキラと反射するのを見て、ノスタルジックな気持ちになる。


─まぁ、ちゃんと働く意思を見せただけ、ちょっとは成長したんじゃない?─


このところ、妹が妙に優しい。

俺の妄想だとはいえ、そこまでしおらしいと流石にちょっと気持ち悪い


俺の妹はそんなこと言わない

俺の妹がこんなに可愛いわけは無い


まぁ、妄想なんですけどね

いよいよ俺も独り言がヤバくなってきたな


辺りはもう夕暮れ時で、家路を急ぐサラリーマンや学生さん達に混じって家路に着く。


家の門をくぐり、ふと違和感を感じる。

あれ?玄関の電気付けっぱなしだったっけ?


玄関のドアを開けるとカレーの匂いがした。

どうやら家を空けている間にお袋が帰ってきて

カレーを作っていってくれたらしい。


念の為妹の部屋を覗くが、手をつけられた様子は無かった。

カレーを注いで自分の部屋に上がると、俺の机に書き置きが残してあった。


─どれどれ、『慶君が就職に向けて頑張っているとお父さんから聞きました。あまり無理せず頑張って下さい』だって─


目の前が涙で滲んで見えなくなった俺の代わりに

妹が読み上げてくれた。


─ふーん、良かったじゃん─

妹がニヤニヤしながら俺をからかってくる。


俺は椅子にも座らないまま、自分の涙と鼻水の海ごとカレーライスをかけ込む。


「こ゛っ、こ゛ん゛と゛っ゛、こ゛ん゛と゛こ゛そ゛、お゛れ゛の゛ほ゛ん゛き゛を゛み゛せ゛て゛や゛る゛ッッッッ!!!」


─はいはい、精々、無理しないでね─



行くぜ、

今度の今度こそ、

本気で本気、

正真正銘最後の親孝行(final war)だっっ!!!

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