第17話
「お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますプギャアアアアッ!!」
俺はネットニュースで見かけた新進気鋭のベンチャー企業に片っ端からアポ無し突撃をかまし、オフィスの入り口で額を擦り付け雇ってくれと懇願しまくった。
─アンタプライドってもんが無いの─
汚物を見る目で妹がこっちを見てくる。
妹どころか道行く人皆見てくる。
だけどそんなの知ったこっちゃ無い、
プライドなんてもんはついこないだ妹の部屋に置いてきたっ!!!
「ですから!!弊社でも適切な時期に入社試験を行ってますので、其方の方を受けて頂いて正式に採用致します!!直接アポイントを取っていない方は─」
「そこを何とか!!そこを何とかお代官様!!
ね〜頼むお願いこの通り一生のお願い先っちょだけだから」
「何をっ…!誰か警備員呼んで!それから警察も!!」
チィッ─
俺は踵を返し、颯爽と人々の間を…、あっ、
ちょっと、…じゃまっ、あっ、御免なさい、
そこ通りますっ、
駆け抜けていった。
はぁはぁはぁはぁ、何とかしつこく追いかけてくる警備員を振り切り、公園のベンチに体を投げ出し体力を回復する。
くそ〜、見通しが甘かったか…
偶々親切にした老人が超大企業の金持ち会長で
、職に困っていた俺を拾って重役に大抜擢、俺の地に足ついた飛躍的発想であっという間に企業の株は急成長、俺は会社のヒーローとして裏から会長の無茶振りという名の密命をこなす影のスーパーエリートサラリーマン金太ろ…慶一郎、のプランになる予定だったのになぁ
─アンタバカァ、いい歳していつまで漫画脳に犯されてんのよ─
うるせえ、歳は関係ねぇだろ。
男はいつだって心の中に自分だけの少年ジャンプ抱えてんだ。
─世の中そんなに甘くないって、今まで散々身に染みてきたでしょうが─
だよなぁ。
公園では何人かの親子連れグループが和気藹々と談笑している。
その内の子供の一人がこちらをじっと見つめてくるので、おずおずと手を振って微笑み返した。
子供はにこっと笑って恥ずかし気に母親の背中に隠れてしまった。
それだけで、俺の中の何かが救われた気がした。
─泣かれずに済んで良かったじゃ無い─
ああ、
─もう、あんまり時間無いわよ─
分かってる、
ていうかいつの間にお前親父寄りになってんの?何?ツンデレ?今時流行んないよ?
俺は妹の脇腹に肘をウリウリと押し付ける。
ただの妄想なので実際は空に肘を置いているだけだが
─ウッゼェわ!アタシはアンタの妄想なんだからアンタの考えに引っ張られるのよっ!─
まぁ、そうだよな、
でも、きっと妹が生きてたとしても、お前は優しいからきっと俺を応援してくれてたと思うよ。
先程の子供は一人芝居の俺を不思議そうに見つめていた。
しゃーねぇ、今度こそ俺も本気出すかな
行くぜ、今度こそ最後の親孝行(final war)だ
─あ、しもしも、白虎君?こないだ紹介してくれた仕事より三段階くらい楽な仕事無い?
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