その後

 英雄が去る時、人々は別れを惜しみつつ、送り出すモノである。

 そういう意味では。


 「いや、何で俺を送り出すだけでこんな盛大なんだ……」


 このロレンスの見送りはそれに匹敵する規模ではないだろうか?


 エドガーとミーナは。


 ((バレない様にしてくれてありがとうございます!))


 っと感謝しながら手を振り、カラカスの教会のシスターアンナは。


 (疫病神を連れ帰ってくれてありがとうございます)


 っと両手で祈りつつ感謝し、ネルブは。


 (アタシ、この場にいるべきなのかい?)


 っと疑問を持ち、門の兵士達は。


 「疫病神を封印作業に当たるロレンス殿に敬礼!」

 「帰れ疫病神!」

 「もう来るな、疫病神!」

 「呪うならリンドブルムだけにしろ!」


 堂々とそう叫び、ロレンスを見送りの言葉を送る。

 まだ夜中であるのに、人はそこそこ集まっている訳だが、背中にクルシナを背負うロレンスは、そんな人達に対しこう思いつつ頭を下げた。


 (俺の好きなコイツが迷惑かけて申し訳ない!)


 それは言葉には出さなかったが、血反吐を吐きそうな表情から皆へしっかり伝わり、去っていくロレンスの背中に対し、皆は同じ認識をぶつけるのであった。


 (((ありがとう、ロレンス神父……)))


 …………


 それから数日後の夜。


 「エドガー君、あそこ、誰かいますよ?」

 「あはは、ミーナさん、もしかしたらアルタイルの奴かもしれないね。 あっ、あっちにも誰かいるみたいだね」

 「ふふっ、そうですね。 きっとリアナではないですか?」

 「「ははははっ!?」」


 二階の窓辺から見える人影に、二人は笑みを浮かべながら会話している。

 そんな二人には今、以前の様な緊張感は全くない、まるで重りを取り除かれた様な清々しい表情。


 それはきっと、危機が去った安心感が与えた笑顔。

 そう、二人はハッピーエンドを……。


 「リンドブルム本国へ急ぎ報告するぞ、エドガルド様の結婚相手はラドラインの姫だと……」

 「ラドラインへ急ぎ報告だ、ミリアーナ様のお相手はリンドブルムの王子だと……」


 まだ迎えてはいなかった。

 それは親として結婚相手の素性が気になった為である。

 だから、二人のハッピーエンドはまだまだ先になるのではないだろうか?


 「わ、私の体、全身筋肉痛で痛いのだが……。 何故だ……」

 「リアナさん、大丈夫ですか?」


 その隣に住む弟と元騎士団長もきっと……。

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二人は互いに『王族』である事を隠している 駄作プロ @RBS2tov

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