第3話 間違った答え


学校生活が一ヶ月を経とうとしている。

授業はもう慣れたもので楽になった。

それにほとんどの人が部活などに入っていて、同じ部活同士で集まっている姿をよく見るようになった。

人は同じ人を見つけると近付いて嫌われないようにする傾向があるのだ。同じ部活同士で嫌われたら部活が出来なくなる可能性も出てくるから当たり前の行動なのだろう。


私はというと、部活に入っていない。

脅迫のような勧誘があったが、興味が湧かず、面倒くさい教師が顧問をしている部活に絶対と言ってもいいほど入りたくないと思う。


(まあ、どの部活にも入らないけど。)


そんなこんなで、私は一番遅くに学校へ登校し学校が終わったら一番に家へ帰っている。一番学校に居る時間が短いのでは無いかと自分自身で思っているところだ。


なんでそんなことが分かるかって?

私は人間観察が趣味だ。きっと分かると思うが人間は嫌いだ。

嫌いなものを観察し、関わらないようにするのが私の生き方というものである。それは、“趣味”ではなく、“習性”だと思うかもしれないが私は趣味だと貫き通す。


案外、楽しいものだ。人間の汚い部分をみて、私は聞いてもいないのにその人の秘密を知った気分なのだ。分かる人には分かるはずだと私は思う。特に誰かにバラすわけでもない。そもそも喋る相手すら私にはいないからだともいう。


ボーッとしながら、窓の外をみていると教師がやってきて話しかけてきた。


「中野。何を見てるんだ?」


「…外ですけど、何か?」


見たら分かることを何故この人は聞いてくるのか。


「あぁ、そうか。あ、そういえば部活入らないか?」


「入りませんよ。というか毎日聞いてくるの辞めてくれますか。私、毎回断ってますよね。」


何がそういえば、なのだろう。きっと何を言うのか最初から決まっていたはずだ。私は断っているというのに何度も聞いてくるのだ、この人は。


「いやぁ、聞くの癖になってな。で、入るか?」


この人の癖など興味無いのだけど。というか、また問いかけてくる。何なんだ、この人は…という気持ちをきっとこの人は知りながらも声をかけてくる。分かった上で声かけてくるところがまたタチの悪い。


「…いい加減にしてくださいよ。入らないですから。」


「まあまあ、怒るな怒るな〜?」


「誰のせいですか…。」


私の怒りを抑えようとしているのか私の頭を撫でるが、逆に怒りが増す。


「なら、見学でもいいぞ。それから決めればいいじゃないか。何も最初から否定しなくてもいいだろう。」


全く話が噛み合わない、この人は。私が言ったこととズレたことを言ってくるんだ。ただ、この人はあまり“間違った”ことは言わない。

さっきのも“間違ってはいない”のだから。私はそれが気に食わない。

私はため息をつき、答える。きっと、“間違った”ことを。


「…分かりました、きっと答えは変わらないと思いますけどね。」


そう言うと、意外だったのかこの人はキョトンと目を丸くし、すぐに笑い出した。あぁ、こういうところだ。私はこの教師が“苦手”だ。

さっき言ってしまったことを無かったことにしたいほどに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私のココロの声をきいて。 月夏 @m_m_00

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ