第3話 This is "N"

― いらっしゃいませーーー!


って、酒くさっ!!ったく何軒目だよ... 

頼むから静かに吞んでくれよおじ様たちよー。こっちはもうへとへとなんだよ...


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高田 凪勇(なぎさ) 21歳 都内在住

救急救命士を目指す大学二年生

大学の寮で暮らし、週末は埼玉の実家に帰ることが多い


俺には目指している職業がある。


8歳のころに、飛行機事故にあった。右脚が機体の一部に挟まって動けなくなり、一度は生死をさまよった。あまりの痛さに記憶が曖昧だが、救急救命士の隊員の早い処置のおかげで俺の右脚は、針10本の縫い傷だけで済んだ。


そう、この出来事がきっかけで、俺は救急救命士を目指すようになった。


ありきたりな理由だなって思っただろ。俺は単純なんだよ。自分でもわかってるさ。


救急救命士になるのはそう簡単ではない。医療の知識だけではなく、あらゆる現場


での対応力と判断力、さらに体力と持久力も必要だ。


四年間じゃ学び足りない。卒業後は経験を積んでいくしかないんだ。


そして今、俺はお金にも困っている。美大に通う妹のために、学費以外の費用は全部自分で補っているんだ。バイト3個掛け持ちしてな。毎日へとへとだけど、あと二年間頑張れば夢がかなうと思えば、このくらい大したことじゃないんだ。



恋愛?

どうやってやるのかすら忘れそうだよ。


高校時代はモテてた方だと思うけどな...。大学に入ってからは毎日忙しいから恋愛してる時間がないんだ。


支えてくれる子がいたらいいなって思うこともあったけど、出会いの場すらないしな。


あーーーー。一日が24時間じゃ足りねーよ!だれか俺に時間を分けてくれー!!!



―――――


「よっ、なぎさっ!今週の土曜空いてるかー?」


「おー!りゅうヤッホー。土曜か...なんで?」


「合コンいかね?」


「.....。」


「お前もそろそろ必死になれよー。一生一人でいるつもりか?」


――――――


こいつは同部屋の龍一(りゅういち)。りゅうって呼んでいる。


俺と同じ救急救命士を目指す親友だ。が、俺とは正反対で、お金持ちだから、学校がないときはだいぶ自由に生きている。おまけに、有無を言わせない整った顔を持ち合わせてるからな... 羨ましいぜ。


――――――


「土曜は授業午前中だけだろ、いこーぜーーーー」


「んーーー。そうだな...」


「俺らもう21だぜー。合コンなんて若いときにやったもん勝ちだろ!お前もそこそ  

 こイケメンなんだし自信持てって。服は俺が選んでやるよーーー」


「でもバイト...」


「何時に終わるんだよ!?」


「土曜だから五時までだけど」


「おっしゃ、決まりな!五時半に俺がバイト先に行くから合流していこーぜ」


「お、おう...」


―――――――――――――


りゅうの押しの強さには勝てねーな。


ま、いいか。こうゆうのもたまには。


週末の課題、今のうちに終わらせとくか...

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異世界クラブで恋がしたい 村ちゃん @MMurachaNN

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