えぴろーぐ! 彼と彼女の未来が明るいものでありますよう
火累と大げんかをぶちかました次の日。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!?」
俺は恥ずかしさのあまり死にそうになっていた。
友達大宣言をして無理矢理キスをする。
VRでの出来事とはいえ、リアル高校登校日である今日、普通に由希と会うので気まずいことこの上ない。軽く五兆回は死ねる。
というかあいつ、あっさり転校先から元のVR高校に戻ることを決めやがった・・・・・・! 数日悩めば多少は恥ずかしくなくなっていたものの・・・・・・! おのれ・・・・・・!
俺も真剣に転校を考えたのだが、恥ずかしいんだねと米五に煽り倒されること間違いないし、由希の奴にそんな風に思われるのも癪だ。
だから俺は遅刻ギリギリに登校し、テスト時間以外は席を外した。
当然だが由希も俺と同程度のダメージを負っているのか俺の方に視線を向ける様子もなかったし、米五との会話は何とか躱すことが出来た。立川には礼を言っておきたかったし煽ってくることもないだろうから話そうと思ったのだが普通に無理だった。
そんなわけで無事に放課後を迎えた俺は荷物をまとめ、チャイムと同時に席を立ち早々に教室を去ろうと早歩きする。
「!?」
「・・・・・・ちょっと来なさい」
と思ったら思わぬ伏兵、由希が俺の腕を強く掴みぐいぐいと教室の外へ引っ張って行く。
「・・・・・・!?」
「・・・・・・」
何か言おうと思うのだが何も言えない。
二人無言でしばらく歩き、由希が人気のないところで俺を解放した。
「・・・・・・」
ここで逃げるのも嫌だったので視線で意図を問う。
耳まで顔を赤くした由希がこほんと咳払いをした。
「その・・・・・・なに・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・わるかったわね」
「は?」
到底由希のものとは信じられない殊勝な言葉が聞こえてきたので思わず聞き返す。
由希がキッと俺を睨んできた。
「二度と言わないから・・・・・・!」
「・・・・・・ああ、そう」
まあ俺を打算で友達やっていると宣言することにより、間接的にあんたは友達じゃないと言われたことを悪く思っているのなら許してやろう。
「・・・・・・で、あんたは?」
「は?」
「謝罪よ謝罪。アホとかバカとか他にもあたしを侮辱した。極めつけは許可もなしに火累のく・・・・・・唇を奪ったでしょ」
「いや俺は真実を言っただけだから」
「は?」
「お?」
しばらく睨み合うのだがここには仲裁役もいないのでやむを得ず俺と由希は互いに息を吐いて打ち止めとする。
「まあ、その、なに・・・・・・わるかったよ」
まあ多少言い過ぎた自覚はあったので一応謝罪。
「え?」
「お前今絶対聞こえてたよな?」
「聞こえてないからもう一度言いなさい」
「じゃあてめえが先にもう一回言え」
「は?」
「お?」
マジで埒があかないので俺も由希も互いに矛を収める。二人だけだとこんなに話が進まないんだなぁ。
ひそかに米五や立川の不可欠性をしみじみと感じていると由希が言った。
「で、一応確認なんだけど、初花はこれからも火累の攻略を続けるってことなのよね?」
「ああ」
「ふうん」
「・・・・・・?」
てっきり性懲りもなくまた怒鳴り散らすつもりなのかと一瞬身構えたのだが、由希にそんな様子はない。
俺が首をひねっていると由希がいたずらっぽく微笑んだ。
「ねえ、優。あたし、昨日決めたの」
「あ? 何を?」
文脈ガン無視の由希を怪訝な視線で見つめていると、突然由希に突き飛ばされ壁に背中を打ち付けた。
「おい、なにすんっ!?」
抗議してやろうと思ったら、ドン、と。
俺の顔の真横に由希が手を突いた。
いわゆる壁ドンである。
何をするつもりなのかと、戸惑う俺が行動できずにいると由希が言った。
「あたしが先にあんたを攻略してやるわ」
由希はそれだけ言うと俺からふっと離れ、髪をかき上げるとスタスタと教室の方に戻っていく。
言われたことを理解したと同時に自覚できるぐらいに俺の口の端が吊り上がる。
「やってみろ! ド素人に俺が負けるわけないがな!」
背中にぶつけられた返答が聞こえているはずの由希はこちらに振り向かなかったが。
なぜかふっと笑みをこぼしているのが分かった。
お前に分からせてやるよ。
メインヒロインが俺って事をな!
メインヒロインは俺ですが? ~超かわいい俺が偏屈イケメンとド変態イケメンを攻略する~ にょーん @hibachiirori
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