ソロリスト

昨今では大して珍しくなくなった、公共の場にポツンと置かれたストリートピアノ。
世界中のピアニストが腕を揮い、その姿が動画投稿サイトに投稿されて、より多くの人に聴かれたりと、様々な形で親しまれている。
その中でも、彼は際立った才能を見せていた。他の追随を許さず、置き去りにし、名声を欲しいままにする彼の事を、周囲は天才などとは呼ばなかった。
前触れもなく現れ、周囲の視線、鼓膜を占領、掌握するピアニスト。暴力的ながら神秘的な音楽を奏でる彼の事を、人は、尊敬と畏怖を込めて“ソロリスト”と呼んでいた。