尊いの表現方法

三枝 優

尊いの創作論

 尊いをWikipediaで検索すると、「身分・品位が高い」などの形容詞である以外に、”「萌え」の感情を通り越し”であったり、「素晴らしい」などの賞賛の言葉と用いられることも多いなど記載されている。

 (「尊み」「てえてえ」といった用例も記載)


 従来の、身分の高い存在を敬う用例以外にサブカルチャー・ポップカルチャーから派生し、Vtuberなどによって広がって来た”萌え”を越えた状態や”好きだ”の上位概念が普及していることが見てとれる。


 だが、尊い(てえてえ)という状態を表現するにはどうしたらよいのであろうか?

 個人的には、”萌え要素”が重要と考えます。


「動物 化 する ポスト モダン    オタク から 見 た 日本 社会」東 浩紀 著

(講談社現代新書) によると、”萌え要素”とは下記のように記載されている。


「萌え要素 の ほとんどはグラフィカルなものだ が、ほかにも、 特定 の 口癖、 設定、 物語 の 類型的 な 展開、 あるいはフィギュアの特定の曲線 など、ジャンルに応じてさまざまなものが 萌え要素になっている。」


 萌え要素ほとんどが、グラフィカルなものであるとするならば、小説中で萌え要素を表現する手法が限られてしまうのではないかと思います。


(なお、前述の「動物 化 する ポスト モダン    オタク から 見 た 日本 社会」の発行は2012年です。当時と状況が変化している可能性があることを理解しておく必要があることをご留意ください。)


 ”特定の口癖” ”設定” ”物語の典型的な展開”といた非グラフィカルな要素とはどんなものであろうか?

 個人的に思いつくものを書いてました。


【萌え要素】

①特徴的な容姿

 髪型・髪の色・目の色・肌の色・背の高さ

 獣人・猫耳・尻尾・角・牙・翼・羽

②特徴的な服装

 制服・メイド服・ゴスロリ

 リボン

 和服・着物・道着

③特徴的な言動・語尾・しぐさ

 口癖・方言・話し方・語尾(~じゃ・~だっちゃ・~ですぅ・~ですわ)

 耳を動かす・髪を揺らす・首をかしげる・尻尾を振る

 表情(にへら・ぷんぷん)

 子供っぽい仕草・格好いい仕草

④弱い立場・状況

 年齢が下・弟/妹/息子/娘/姪/甥

 生徒

 後輩

 病弱

 使用人・メイド

 奴隷・身分が低い

⑤上位の立場・状況

 (単に上位の立場なら”てえてえ”ではないただの尊いになる。

  後述のように他と組み合わせてギャップを表現するなどに使用する)

 年齢が上・兄/姉/親

 教師・生徒会長

 肉体的に強い・能力的に強い

 実力が高い

 身分が高い(王族・貴族)・使役する立場(主人)

 神・女神・悪魔

⑥強い愛情・信頼

 主人公やヒロインなどに対する強い愛情

 仲間や友人や肉親に対する強い信頼

⑦強い情熱やそれに対する努力

 部活・コンテスト

 仕事・勉強・成績

 競技

 冒険・旅

⑧特別な関係・特別な状況

 幼馴染

 許嫁・恋人・配偶者・恋愛感情

 元カノ・元カレ・離婚した配偶者

 先輩・後輩

 同じ部活

 生徒会

 隣の席

 契約・誓い

 秘密の共有

⑨特別な行動・状況(後述の逆境と組み合わせるなど)

 パンを咥えて通学途中にぶつかる

 エレベーターなどに閉じ込められる

 ダンジョンに置いて行かれる

 競技などに参加する(高校野球など)

 記憶を無くす

 死に戻る・時間をループする

 敵対する国同士

 侵略者と非侵略者

 神と悪魔

 ××を秘密にしないといけない

⑩セクシーさ・セックスアピール

 巨乳・貧乳

 筋肉

 水着・下着・薄着・全裸

 抱き着き・キス

 胸などを触る・触らせる

 セックス

⑪特殊な性格・性癖・趣味

 猫好き・犬好き

 天然

 ドジっ子

 ツンデレ

 強引・引っ込み思案

 女性好き・男性好き(一部分や種類を含む)

 猫耳好き・メイド好き

 ぬいぐるみ集めなどの趣味

⑫特別な能力・技術

 料理・家事

 強力な肉体的能力・超能力・魔法

 勉強ができる・仕事が有能

 コミュニケーション能力

 歌・楽器・ダンス

 知識・特殊技術

 特に運が良い・悪い

⑬特殊な仕事・役割

 アイドル・Vtuber・小説家・漫画家・イラスト・DJ

 聖母・勇者・賢者

⑭他人の”尊い”を表現し、共感させる

 他のキャラに”尊い””好き”と言わせる

 ”リア充爆発しろ”


【取り巻く状況】

 ①~⑭に組み合わせて使用する(例:いじめられてるけど実はアイドル)

A:逆境

 いじめの被害者・陰口

 影キャ

 敗北・弱者

 貧乏

 奴隷

B:敵対的存在(主人公などを際立たせるために使用)

 ライバル

 敵・邪魔する存在

 いじめる立場

 嫌っている相手 

C:すれ違いの状況・じらし

 好き同士がすれ違う

 好きだけど身分が違う


D:上記の組み合わせ(順列)

 例:③+④ 子供っぽい後輩

   ⑧+⑩ セフレ

E:上記の組み合わせ(ギャップ)

 例:⑤+⑧ 教師と生徒だけど、秘密を共有している

 

☆注意事項

 ①~③またはそれ以外も、書きすぎると説明的な表現が過多になる懸念あり。

 ④や⑩はやりすぎると、嫌悪感を抱く人がいる可能性がある。

 ⑥は重要だが強すぎると非現実的になる可能性がある。ただし、ファンタジーの場合はもともとが非現実なので受け入れられる可能性がある。

 ⑭は小説特有の表現であり、漫画やアニメなどの映像ではくどくなる印象あり。

  読者の想像での映像でも同様の可能性あり。



 ちなみに、”萌え”の対象としては、ヒロイン以外にも主人公やサブキャラクターも含むと考えています。




 以上が、私が思いついた要素になります。

 もちろん、他にあるかもしれませんが参考になればと思います。

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尊いの表現方法 三枝 優 @7487sakuya

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