「原稿用紙一枚分の物語」#2

@itsuki66

戻り雨

近所まで出た帰り道、急に土砂降りになった。


走り出して間もなく、雨は止んだ。


ただ振り返ってみると、10m先はまだ降っていた。


境界に出会って少し驚いたが、


局地的豪雨は、今やそうそう珍しくもないのだろう。







家に帰ると、明らかに自分のものではないが、


見覚えのある靴があった。


部屋に入ると、


「どこに行ってたの?」


居るはずもない元嫁が台所に立っていた。


なぜなら、半年前に妻が浮気相手と出て行き、


先週ようやく離婚が成立したばかりだったからだ。


その瞬間、あることが頭を過った。


すぐさま外に飛び出た。


今来た道を懸命に走った。


途中、最近開店した美容室の扉に「テナント募集」の貼り紙。


一年以上前に戻っている。


もうさっきの場所に雨はない。


どこだ。辺りを見回してようやく見つけた。


が、もう小降りになっている。


全力で走った。







走りながら悩み続けた一年間が、


走馬灯のように過ぎた。


彼女への思いが溢れた。

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