現役アイドルの私は、同僚の百合営業で癒されたい

皮以祝

美少女、登場っ!!

 アイドルは夢を売る仕事。


「休みの日は、あっ! 最近は『うま娘』っていうスマホゲームやってます!」

「それ、CMでやってますね。まだやれてないんですけど、どんなゲームなんですか?」

「はい、実際の競走馬の名前をした女の子が出てくるんですよ~」

「へぇ、例えば?」

「そうですね~、シルバーシップちゃんとか、セイカイジョウオーちゃんとか色々いますよ! でも、私はアキフララちゃんが好きです!」

「アキフララ⁉ ほぉ……! なるほどね~」

「若い子が興味を持ってくれるってのは嬉しいなぁ」

「はい! 実際はどういう子だったんだろ~って調べちゃったりしてっ」

「娘に欲しいなぁ……」

「林道さん、娘さんいらっしゃるじゃないですか」

「最近は、なかなか――」


 やっば、めっちゃ使われてんじゃん!

 家で自分の出たバラエティーを見ながら、ストゼロを飲む。

 前は結構カットされてたけど、今回はほとんど使われてる!


「これは、自慢しちゃおっかな~……おか~さ~ん!!」



 ☆☆☆



 私は、『NexsiSネクシス』というアイドルグループに所属してる7人の一人で、『次女』の朝比奈ひなた(本名:赤坂千尋)。


 そう、私達『NexsiS』は、姉妹アイドルとして活動している。


 姉妹グループとか、兄弟グループとかは聞いたことあったけど、メンバーを姉妹として活動するのはなかなか珍しいんじゃないかと思ってる。


「えいか姉ちゃ~ん、これみて~!!」

「……なに? いま忙しいんだけど」


 まあ、舞台裏じゃこんなもん。

 しゃーなし。


「やよいちゃん! 何食べてるの?」

「コンビニのおにぎりですけど」

「おいしい?」

「普通です」

「そっか~」

「はい」

「なんのおにぎり?」

「特上炭火焼カルビです」

「え⁉ いまそんなおにぎりあるんだ⁉」

「はい」

「え~、何処のコンビニ?」

「すぐそこのセブンです」


 この子はガチレズ疑惑のあるやよいちゃん。ちな六女(の設定)

 本人は特に何も言ってないけど、私の尊いレーダーにビビビっときた。

 「あ、多分この子、わこちゃんのこと意識してんな」って。


 ちなみに、わこちゃんは、一番下、七女(の設定)。

 明るいキャラで売ってるんだけど、かれぴっぴがいるんだよ、しかも男アイドル。

 いいんだよ? 別に、こっちに迷惑かけないなら。

 でも、なんというか、隠す気が無いのかあるのか。

 私達だと普通にわかっちゃうし。

 もう他の人には一切知られないっ!って決意でやってくれとは思う。

 でも、そのおかげでなかなか香ばしい三角関係が出来てるのでヨシ!


 ただ、百合カップルがいないのはどうなの?

 アイドルだよね?

 いろよ。

 何のためにアイドルになったと思ってるんだ。

 お金と趣味だよ。

 まあ、結構なお金いただいてますし?

 いいと言えばいいんだけど。



☆☆☆



「ほら、ひめりちゃん。あ~んっ♪」

「ありがと、ななお姉ちゃんっ!」

「もう……ほっぺ、チョコついてるよ? とってあげるね? ん……」

「わっ! もぉ~、はずかしいよぉ……」

「あ~!! ひめりお姉ちゃんばっかりずるい! ななお姉ちゃん、しふぉんにも~!!」

「もう……甘えんぼうさんなんだから……」


 はぁ……♪

 これ、これだって!!!

 なんで、それが楽屋でできないの⁉

 やれよぉぉぉおおおぉぉぉぉ!!!


「ひなたちゃんもいる?」

「ほしぃぃぃぃ!!!!」

「う、うん……」



☆☆☆



「ひなたちゃん、やっぱりいいねぇ~」

「ありがとうございます!」


 番組のお偉いさんの、菱山ひしやま夕日ゆうひさん。

 いくつかの現場で一緒になってて、結構仲いい。

 どれくらいかって言うと、菱山さんの奥さんと娘さんの連絡先を知ってるくらい。

 いやぁ、まっじで美人なんだわ。

 ガツガツいったら仲良くなれました。


 菱山さん自体はなんというか、あれ。

 枕営業とかしてそうな見た目なんだけど。

 あれ、でも、奥さん女優さんだったって言ってたし、もしかしたらあったかもしれないけど。

 ま、私には関係ないからね!

 アイドルのおしごとは『花』じゃなくて、『夢』を売ることだから!

 そもそも私、色物というか、変人枠だし!


「グッズも一番多くしたのに完売したって聞いたよ?」

「いや~、ありがたいですね~」


 ウッハウハよ。……嘘です。


「そういえば、『ここちか』の撮影で、言ってたでしょ、ゲームのこと」

「あっ、うま娘ですね!」

「そうそう。陽花里ひかりがやるって言って、早速始めたって絵里奈えりなが言ってたよ」

「うわぁ!! 嬉しいです!」


 陽花里さんが娘さんで、絵里奈さんが奥さん。

 漢字三文字っておしゃれだよね。

 転生したらそういう名前つけてくんないかな?

 たのむよ、来世のかあちゃん、とうちゃん!


「あ、でも、強くなってからフレンドにしてもらうから秘密にしといてって言われてたんだった!」

「え、もう言っちゃってるじゃないですか!」

「内緒な、内緒」

「わかってますよ~」



☆☆☆



「アンタはいいよね、菱山さんと仲良くて」

「仲いいよ~」

「ふん、何ヤッたんだか」


 しふぉんちゃんが楽屋を出ていってしまった。

 最近、しふぉんちゃんは機嫌があんまりよろしくない。

 グッズとかの売れ行きがあんまりよくなかったからか、握手行列が短かったからか……

 気にすることないのにね?

 ちなみに私が一番か二番か三番か四番か五番か六番に好きな子でもある。

 みんなすきっ!


「なんで、ひなたが人気なのかは私もわかんないけどね」

「ウーパールーパーみたいなもんじゃない?」

「う、うーぱー?」

「えっ、ななちゃん、ウーパールーパー知らないの⁉」

「何語?」

「え、わかんない……トカゲみたいなやつだよ?」

「私、爬虫類無理」

「珍獣枠的な感じ? 私が好きとかじゃなくて、興味があるみたいな感じだと思うよ?」

「男の人って、同じ趣味の人が好きだからじゃないですかぁ? オタクの人たちにモテてるんでしょぉ? 朱璃しゅりも一緒にワイン飲むと喜ぶし~」

「わこちゃん、そういうことは秘密にしないとだめだよ?」

「……うっざ」


 わこちゃんも出ていってしまった。

 かれぴっぴの話題遮ったからかな?

 そんなつもりじゃなかったんだけど……

 のろけ話もそれはそれで使えるしね!!


「では、私も失礼します」

「あ、えいかお姉ちゃんもお疲れ様~」

「……」

 

 あぁ……おにゃのこが減ってく……

 匂いが足りない……


「ひなたが変な呼び方するからでしょ」

「……ななちゃん」

「なに?」

「あのね……」

「あ! いい! いらない!!」

「美少女と姉妹になったのにお姉ちゃんって呼ばないのは大罪なんだよ!!!」

「うるさいうるさい、何回もきいたから!!」

「すーはーの刑ね」

「それ、ほんとに変態っぽいから――」

「はい傷つきましたー! いしゃりょぉお!!!」

「きゃっ!!」


 あぁ……まっじ美少女。

 抱き心地も最高……

 ほんと、おすすめだよ!!

 アイドルと仲良くなりたい人、アイドルを一番近くで見たい人!

 君もアイドルになろう!!


「もういいから、はなれて」

「いしゃりょう……」

「ひめりかやよいの方行って」


 キランッ!!

 私の目は最大級に輝いてたと思う。

 でも、でも……


「正当な理由が……っ!」

「私にもないでしょうがっ!!」


 えへ、頭叩かれちゃった♪



☆☆☆



「私、ふられちゃいましたっ……」


 休日、やよいちゃんに誘われて、ウッキウキで行ったら、重い話をされた。


「同性、愛とか、気持ち悪い、って……!」


 うん、ごめん。

 めっちゃかわいい。


「おかしいって、わかってますけどっ……それでも……」

「おかしくなんてないよ」


 美少女は人類の宝だからね。


「私、ずるいんですっ……ひなたさんなら、わかってくれるって……私の、味方、してくれるってっ……!」

「いいんだよ? 私、お姉ちゃんだからね」

「うっ……うわぁぁぁあああぁぁぁん!!!!」


 かわ。



☆☆☆



「ひめりちゃん、お誕生日おめでとぉぉぉ!!!」

「「「「「おめでとう」」」」」

「ありがとうございます」


 マイホームに美少女6人←now!


「ふぅ~!」


 わ、ひめりちゃんの息がこっち来たっ!

 缶詰にしたい!


「食べて食べて~」

「ありがとうございます」


 ぱくりとひめりちゃんが小さく一口。

 うんうん、私の手作りケーキ食べてくれたってことは結婚してくれるってことだよねっ!

 私のオタクレベルなら当然。

 推しのためにケーキくらい作れるに決まってる。


 仲良く歓談。

 はぁっ♪

 夢みたい……



☆☆☆



「じゃあ、私、動画あげますね」


 ひめりちゃんがスマホをいじってる。

 仲良し証明のために使うんだって。

 なかよしなかよし!


「私、そろそろしつれい、しますねぇ~?」

「じゃ、私も帰るから」

「しつれいします」


 わこちゃんとしふぉんちゃんとえいかちゃんが帰ってしまった。

 ケーキも結構残ってる……


「あ、ななちゃん、無理して食べなくていいからね?」

「別に……たまには甘いもの食べるくらいなんでもないし」

「……結婚する?」

「なんでよっ!」


 だって、だってぇ……

 こんないいこ、他にいないってぇ……!


「ていうか、食べかけで帰るとか人としてどうかと思うし」

「あ、大丈夫。美少女の唾液は最高の調味料だから」

「きもい」

「でも?」

「え、なに?」

「好きって言って?」

「……きも」


 テレやさんだな、このこのぉ♪


「私、もうお腹いっぱいで……」

「いいのいいの! ひめりちゃんのお祝いなんだから、無理させたらお呪いになっちゃうし!」

「ちょっと何言ってるのかわからないですけど……持って帰ってもいいですか?」

「お持ち帰り? 私を?」

「違うに決まってんでしょぉがっ!」


 愛の鞭。


「(あの、ひなたさん……)」


 小声でやよいちゃんに話しかけられた。

 耳にかかる吐息が……


「(フォローしてくれて、ありがとうございました)」

「(ううん、気にしなくていいよ? ついこの間なんだから、しかたないよ

)」

「(ありがとうございます)」


 こっちこそありがとうございます。

 ASMRですよね?





 ああ、いい日だったっ!!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

現役アイドルの私は、同僚の百合営業で癒されたい 皮以祝 @oue475869

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ