21回目の挑戦
水谷一志
第1話 21回目の挑戦
一
しつこいのは分かっている。
でも、あきらめきれない。
これは、そんな私の21回目の挑戦。
二
あいつは名前からしてかっこいい。
男の子らしさを連想させるその名前。私は別に名前フェチというわけではないが、それも魅力の一つだ。
だから……、彼のいる所に何度も足を運んでしまう。
三
しかしあいつにはライバルが多い。多くの人があいつの周りには常にいる。そしてその中にはかわいい女の子たちも。
それがあいつの性なのだろう、仕事なのだろう。それは分かっている……つもりだ。
でも、悔しい。
四
そんな私は、何気に何度も挑戦をした。
思い切って何度もあいつのためにアタックをした。
それは直接的なものもあったし、あえて積極的に行かずに様子を見るフリをしたこともある。
あと無理に2つに分けた自分を演じてみたり、ちょっとあきらめたフリをしてみたり……。
ただ保険をかける作戦は今の所していない。私はあいつに一途だから。
五
そんなあいつのために、私はけっこうなお金を使っている。
お酒だって対して飲めないのに飲めるフリだってしてきた。……決して健康的ではないけれど。
そして、他に魅力的なやつもいっぱい同じ場所にはいる。……確かにいっぱいいるが、私はやっぱりあいつに一途。
なので今日もあいつのために頑張る。
六
1回目の挑戦。大人になったばかりの私は何がなんやら分からずその世界に友達と足を踏み入れた。
そこでたまたま出会ったあいつ。私は一気にあいつの虜になった。
でも……、勢いでいった私は惨敗。まあ当たり前だ。
2回目の挑戦。私は少しだけ頭を使う。
人が少なくなった時間でのアタック。
でも関係なかった。あえなく私は惨敗。
そして挑戦は3回目、4回目と続く。その間、「これはいけるかな?」と思ったこともあったが、やっぱりダメ。ちょっとやりすぎて失敗したようだ。それから私は様子を見るようになった。もちろん周りの様子も。まあでもダメなものはダメか。……とりあえず私の挑戦は続く。
そして10回目、11回目。自分でも何やってんだろうな、って思う。こうなるとあいつのことが好きなのかどうかも怪しくなってくる。半分は自分のプライドを満たすため。もう半分はヤケ。……とまあそれは本当でそういう気分の時もあるのだが、やっぱり私はあいつが好きだ。そんな汚い心ときれいな心が混ざりながら、決してきれいごとではない世界に私は今日も足を運ぶ。
15回目。16回目。……半ば泣きそうな私は他のヤツでの気分転換も試みる。でもダメ。全く気が乗らない。やっぱり私はあいつじゃなきゃダメ。
ちなみにこれは友達から聞いたことだが、あいつはその世界ではまだ攻略しやすいらしい。他のヤツに比べて、自分で考えれば何とかなる……と。でもそれは本当?私の前に本当にちゃんとしたあいつの姿を見せてくれる?でも、ここまでくれば信じるしかない。
そして、21回目の挑戦。私がこんなに夢中になるなんて、1回目、このクラブに足を踏み入れた時は思いもしなかった。
そしてその時がやってくる。
「えっ、本当に!?やったあ!」
【ついに21、ブラックジャックが出た!】 (終)
21回目の挑戦 水谷一志 @baker_km
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