実際に私が体験した怖い話

かんた

第1話

 これは、まだ私が小学校に上がる前のお話です。


 私は今では親元を離れて暮らしてはいるのですが、もともと一般家庭の、それなりに幸せな家庭だったと思います。

 幼いころから我が家族は一軒家に住んでいて、両親、私、妹弟たちの家族で暮らしていました。

 今回のお話は、まだその一軒家に住み始めてからあまり長い月日の経っていないような頃のことでした。


 その日は特に何か不思議なことがあったわけではないのですが、看護師をしていた母親が夜勤明けという事もあり、かなり早い時間に眠りについていました。

 父親も、母と一緒に寝ると言って早めに寝室へと行ってしまい、珍しく夜遅くまで、と言っても当時の幼い自分にとっては遅い時間というだけで実際には22時を少し超えたあたりだったと思います。


 当時は、まだ幼い自分は、夜は基本的に親よりも早く寝ていて、その時のように先に両親が寝室に行ってしまうことは珍しいことでした。

 まだ子供だったので、そのような時間が非常に楽しくて妹と一緒にしゃべりながら、そろそろ眠くなってきたな、という事で両親の既に寝ている寝室へと向かったのです。


 その時、妹たちはトイレに行っていたので、先に私だけが寝室へと行くことになりました。

 もう既に眠気も来ていて、妹たちと一緒に行くほどの余力は無かったのでしょう、階下から待って、と呼ぶ声が聞こえていたような気がしますが、そこはあまり定かな記憶が残っておりません。


 そして、階段を上り切って両親の眠る寝室の扉を開いた時でした。

 そこには、何か、白い靄のようなものが浮遊していたのです。

 最初は、眠くて目がおかしくなっているのか、と目をこすりました。

 しかし、むしろ暗闇の中ではっきりと見えるようになって、怖くなってきてしまいました。

 そして、私がその白い靄のようなモノをしっかり認識したかと思うと、ソレはふわりと形を変えて、二つの靄へと分裂したのです。

 そしてそのまま、ちょうど両親がそれぞれ眠っている場所の真上へと移動すると、両親に入り込んでいくかのように沈んでいったのです。


 そこで、もしかしたらお化けかもしれない、と言いようのない恐怖を感じて両親の元へと近づき、声を掛けたのです。


 いつもなら、声を掛けて少し揺すれば目を開けて反応してくれるのに、その時に限っては全く起きる気配もなく、両親は眠ったままでした。

 私は、更に怖くなってきてしまい、泣き始めてしまいました。

 まだまだ幼い時分の事なので、なかなか泣くことを止められず、両親に抱き着いて大声で泣きながら先ほどまでとは違って遠慮なく揺すったり、叩いたりして起きてもらおうとしていたのですが、それでも全く起きる気配は無く、私はそのまま泣きつかれて、母に抱き着いたまま眠りに落ちてしまったのです。



 そして翌日、なぜ布団に入らずに眠っていたのか、と起きてから話を聞かれて、そこで何があったのかを話したのですが、まるで何も知らなかった、気付かなかった、と両親に言われ、そのあと寝室に入ってきたはずの妹たちに聞いても何も無かった、と言われて、私にだけ何か見えていたのかもしれない、と言い知れない恐怖に襲われてしまったのを覚えています。


 もしかしたらアレだったのかもしれない、といったような推論を立てることは出来ますが、それでも全く再現というか、再度巡り合うことは出来なかったので、今でもあの靄の正体が何だったのか、分からないままなのです。


 もし、似たような経験をした、という方がいらっしゃいましたら、ぜひ話を聞いてみたい所存です。

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