最終ターン(最後の月)
第十回:個別マスターより
「今月も『Drハルマゲの危険な世界』に参加してくれてありがとうございます。今回も私信をありがとうございました。
外は最後の冬です。冷たい雪が降っています。
とうとう最終回を迎えました。
このゲームもこれで終わりであり、私達の人生ももうすぐ終末を迎えます。
まさかゲーム期間と重なって、人類文明終焉のカウントダウンが始まるとは。
恐竜絶滅時のそれの実に三倍の質量を持つ巨大隕石、しかもその落下予測地点がこの日本列島……。
地球脱出船も間に合わなかったし……。
今月内に人類が滅亡するのはもはや必然です。
正直に言えば、これ以上生きられない事に私は悔しいです。
せめて『Drハルマゲの危険な世界』は大団円を迎える事が出来たのは幸いです。
実質上の後日談となった最終回ですが、ゲームの中の世界では最終戦争がすみ、明るい希望の未来が訪れています。
ゲームに関わる全ての人人よ、幸せになれ、という思いをこのリアクションに込めました。
このPBMが成功と思える結果に終わったのはあなたがたPLのおかげです。そして、私と他のMS達、最後まで裏方に徹してこのゲームを運営してくれた会社の人達。
そして、インターネットをトラブルなく運営してくれたネット会社の人達とそれを補佐してくれたハッカー達。
最後の日まで『日常』に徹してくれている市井の名もなき人達。
このPBMは全て皆のおかげの賜物です。
MSとPLとしてではなく、プライベートで私と会えないか、という質問ですが、残念ながら再びお断りさせていただきます。
私はあなたを幻滅させたくはないのです。
今回「死ぬ覚悟があるのだったら、その覚悟を生きる為に使った方がいい」という私自身の言葉を、あなたの私信で思い出させていただきました。
残念ながら生き残るのは出来なさそうですが、私はいわゆる転生に勝負を賭けてみる事にしました。
怪しい宗教もアイテムもいりません。
根性、気力。その根拠なき時代遅れのものを自らの信念を託します。
そんな私をあなたは軽蔑するでしょうか。
もし生まれ変われるのならば、あなたが許してくれるならば、来世も二人して『ゲーマー』になりましょう。
きっと生まれ変わった来世の世界でもPBMは発明されると思います。
二人が『ゲーマー』のままでいれば必ずそれに参加し、出会えるでしょう。
私達が真の『ゲーマー』であるならば、魂が面白いゲームを求めあうはずですから。
私もその時にはもっとましな人間に生まれたい、と、思います。
いや、生まれます!
人生はゲームであり、誰もがその参加者です。
私は自分の運命を支配しているものに「徹底抗戦」というアクションをかけます。
あなたのアイテム称号欄に『祈りの指輪』が出力されていると思います。
では、あなたと私の来世にもPBMの守護精霊の御加護がありますように。
いや、加護ではなく自分自身に力を。運命を打破する力を。
十二月某日 百円アイスMS拝」
PBM ゲームマスターからあなただけへ秘密の『個別マスターより』 田中ざくれろ @devodevo
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