第7話 「お会い出来るといいですね」
「さて、このままだと苦しいでしょう。早く楽にしてあげますから、その場に止まってください」
琳寧は地面を強く握り、汗が流れ落ちる。歯を食いしばり、目は憎しみのあまり充血していた。
「なんで、なんで私達が。悪いのはあの男なのに……!!!」
「最終的にはそうですね。ですが、それを見抜けなかったのは貴方自身かと思いますよ?」
彼は琳寧の前に移動し片膝をつき、彼女の顎を掴み、無理やり目を合わせた。
「哀れな人間よ。そろそろ浄化させてもらうぞ。お前の大事な、その赤い
ナナシが口にした瞬間、琳寧の足元が青く渦を巻くように燃え始めた。
「い、いや……」
どんどん青い炎が琳寧を包み込む。
「やめ……お願いします……お願い……何でもするから……だから……助けて!!!」
涙と土で汚れた顔をナナシに向け手を伸ばす。だが、その手は届かず動きを止める。
その理由は、ナナシの姿が先程と異なっていたからだ。
耳は狐のように尖っており、お尻からは九本の尻尾。爪は鋭く尖り、口の隙間からは牙が見えていた。
その姿は、この世で有名な妖。九尾の狐だった。
ナナシの変貌に、琳寧は震えるしかできない。だが、地面から現れた炎は彼女の心境など気にせずどんどん包み込む。
「──ぁぁぁああ!!!! 熱い!!! 熱い熱い熱い熱いあついあついあついアツイアツイアツイアツイアツイ!!!!! 許さない!!! 私じゃない!! あの男がぁぁああ!!!! 殺してやる!! 殺してやる殺してやる殺してやるぅぅぅううあああああああ!!!!!」
琳寧の悲痛の声は数分続き、そして──今。聞こえなくなった。
ナナシはその青く輝いている炎を、赤い瞳で見続けていた。
『貴方の依頼はやり遂げました。またのご依頼、お待ちしております』
小さく呟き、ナナシはロングコートを翻し、薄笑を浮かべながら闇の中へと消えていった。
森の中には赤く染った地面や樹木。その付近には、頭と体が切り離された死体と、赤い印が刻まれている右手だけが、残されていた。
☆
それからしばらく時が経った。
店の中には、ナナシが片手にオルゴールを持ちながら汚部屋の中で一人、座布団の上に座っていた。すると、何かに気づいたのか。俯かせていた顔を上げ、ドアへと目線を向けた。
「──おや。依頼人が来たようですね」
ナナシはオルゴールの蓋を閉じ、大事そうにポケットへと入れた。
その口元には歪な笑みが浮かんでおり、赤く光っている瞳は、楽しげにドアへと向けられる。
「次はどんな依頼でしょうか。楽しみですねぇ〜」
貴方の復讐、お手伝い致します 桜桃 @sakurannbo
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