名門校の落ちこぼれな俺と高嶺先輩

さーど

【高嶺先輩との日常会話】

 ……ざわざわ、ざわざわ。


 とある名門校の、広々として綺麗に整備されている中庭。

 とある昼休みに一人の生徒がこの場に現れたことで、なにやら騒がしくなっている。


 その内容とそこから注がれる視線は、尊敬そんけい憧憬どうけい、そして羨望せんぼうが含まれている。

 それ程なまでに、その中心に君臨くんりんするとある生徒が良い意味で有名だということだ。


「……今日も相変わらずだなあ、''先輩''は」


 その生徒の名は高嶺綺咲たかみねきさき、この名門校に通う高校三年生。

 入学時から常に定期考査学年一位というのが、下級生でもまず噂になる人だ。


 一番有名な点を一先ひとまず挙げたが、先程の視線を受けてると察する通りそれはごく一部。

 彼女がここまでになっている理由は、その美貌びぼうと裏のない?性格からきているのだ。


 凛としたたたずまいで姿勢よく歩き、なびくハーフアップにされた黒髪は光沢をかもし出す。

 そこから自然に視線が動いた先、それを見た皆はあまりの美しさに目を見開くだろう。


「………」


 ……ねえ、雰囲気ぶち壊すことになるんけどひとついいかい?

 俺の性格上、こんなポエム風に言うと段々吐き気がしてくるんだけど……


 ああごめん!折角先輩の姿を想像に膨らませようと心をおどらせていただろうに!

 でも、先輩を知る俺がつい『裏のない?』ともうやらかしてるから!ね!?(迫真)


 という訳で、今から素で行くよ!


 光沢の見える黒髪から動いた視線の先は、俺だったらまず大きい瞳に移っていった。

 青紫という色は寒く暗そうかと思いきや、暖かい雰囲気で可憐にハイライトが乗る。


 ……素の時は、青紫という色の雰囲気を多少感じさせてくるけど。

 ごほんごほんっ!!(やらかし)


 キレ目気味に並べられた睫毛まつげは長く、その上にある眉毛は細くてしなやかだ。

 そしてまた、瞳へと視線が戻っていく。


 その瞳に思わず視線が吸い寄せるけど、それはその周りも影響があると思う。

 下地である肌は乳白色にゅうはくしょくで透けるよう。そして、常になめらかさを保っている。


 まあ、今の服装だと見えない腕を肌荒れで悩んでいるらしいけど。

 顔はそれを全く知らなさそうだから、そこそこ幸運なんじゃない?


 ……その中心である鼻梁びりょうも整っていて、色素の薄い唇はぷっくりとして瑞々しい。

 時折、無防備になる唇を奪っちゃいたああもう自分がうるっせえ!!(怒)


 これ程までに自分の心境を含ませた真面目?な解説があるかなあ!?

 ごめんよみんな!そうさ俺はそういう人間なんだ!


 というか、一人語ってるくせに名乗ってなかったね。俺の名は──


「……げっ、''落ちこぼれ''もいるじゃん」

「名家を追い出された''元貴族''の癖に、高嶺さんと同じ空気吸って平然としていやがる……」


 あっ、これ十中八九俺のことだね。

 気がついたら、先輩の視線の先にいる俺へ様々な視線が送られてきていた。


 まあ、無論それは先輩と同じようなプラスの意味を含ませてはいない。

 せいぜい侮蔑ぶべつ軽蔑けいべつ、あとは嘲笑ちょうしょうと言ったところかな?


 それ程なまでに、俺が悪い意味で有名だということ言うことだ。


 そんなことより、地味に最後以外は先輩のも俺のも二文字目を同じ読みにしたの凄くない?

 尊''敬''と憧''憬''、侮''蔑''に軽''蔑''。偶然だけど、それだからこそ天才かも(笑)


「……何故か楽しそうにしているけれど、相変わらずね」


 マイナスな視線を気にすることも無く笑っていると、こちらに近づいてきた先輩が呆れた様子でそう言った。

 『相変わらずね』って、さっきの俺の呟きもしかして聞こえてたりするの?


 でも悪いっすけど先輩、俺まだ自己紹介終わらせてないから先に済ませますね。


 改めて名乗らせてもらうよ。俺は中津清隆なかつきよたか、この名門校に通う高校二年生。

 入学時以外は定期考査毎回最下位の、''落ちこぼれ''として逆に噂になるやつだ。


 まあお察しの通り、俺の悪い噂はこれだけに留まらない。まだまだある。

 ……というか、成績だけで''落ちこぼれ''とまでは言われるわけが無いと思う。


 で、俺がここまで有名になっている理由はとある名家から追い出されたこと。

 さっき勝手に言われたんだけどね。


 別に公言したわけでもないのに、何故かその事実がもう学校中に知れ渡っていた。

 まあ、どこの名家から追い出されたかまでは発覚してないのが幸いかな。


 そんな悪いステータスはこの名門校では俺しかおらず、成績もありこの悪評だ。

 まあ多分、ぱっとしない見た目も更に加味されてると思う。


 先輩の説明は長々と続くわけだけど、俺の説明はさしてこんなもんかな。


 そんな俺だけど、実を言うと綺咲先輩と結構な接点があった。そこそこ仲はいいと思う。

 月とスッポンって言葉がこれ程似合う関係は俺の知ってる限りないかな〜(笑)


『何故か楽しそうにしているけれど、相変わらずね』


 というわけで、さっきの先輩の言葉に戻ろう。わかりやすくもう一回載せておくね。

 ん?俺と綺咲先輩の関係の詳細はって?それはまた今度説明するさ。


 で、先輩のその言葉を紡ぐ唇が動いた途端、ざわざわとした雰囲気が激化する。


「嘘だろ!?なんでそっちにって思ったら、高嶺さん''落ちこぼれ''に話しかけたぞ!?」

「えっどうする!?高嶺先輩も名家出身だし、あの人も''元貴族''にならないよう救済する!?」


 いや、前者はともかく後者はなんだか小学生の虐めのような発想だね。

 それあれでしょ?誰かに触ったらその人のウイルスが伝染するってやつ。


 そんなことを呑気に考えている俺は、無論けろっとした表情だ。特に気にしていない。


 しかし、それを聞いた先輩はまた呆れたようにため息を吐いた。

 この騒ぎに対しての反応ってことは、ため息の対象は周りに対してかな。


「よく清隆くんの事をあまり知らないで容赦ようしゃなく蔑ますわね……」


 会ったばかりの頃に別の意味で俺を蔑んできた人がよく言うものである。

 それも、周りのものよりもつまらなくなんとも理不尽な理由だったからなおさらだ。


 まあ、そこを指摘したら飛び膝蹴りをしてきそうだから言わないけどさ。


 そんなことを考えつつ、俺はおどけた様子で笑いながらようやく口を開いた。

 メタいこというけど、2300文字来てて発言二回目って……(悲)


「小さい頃から慣れっこなんで特に気にしてないっすよ〜。あははっ」


 むしろ、明確な''自分以下''としてみんなのストレスを癒してくれてるなら逆に誇りに思う。

 人間って''自分以下''を探す生き物だし、それが名門校の皆なら更にだろうしね。


 しかし、先輩はまたため息を吐く。

 こらこら、完全にデマだけどため息を吐くと幸せが逃げちゃうぞ〜?


「あなたって本当にひねくれた性格してるわよね。いや、それとも''いい性格''かしら?」

「どっちも対して意味変わらなくないすか?」


 そこで悩まれても、結局俺に毒舌を吐いてくるだけじゃん。

 先輩は納得したように「それもそうね」と頷いた。なんともせぬ。


「……んなふざけた事はいいとして、用件はなんすか?」

「あら?私は至って真面目に言ったのだけどね」


 楽しそうに笑う綺咲先輩。

 だけど、仲良い人から毒舌を浴びるって俺でも結構キツい事だったりするんだよね〜(泣)


 まあ、その真意は毒舌としてじゃなく慣れてる俺を心配してだとは思うけどさ。


「それで、用件としては特にないわよ?ただ見かけたから来ただけ」

「……そのせいで、相変わらず周りに絶句されていますけれどね」


 俺は周りを半目で一瞥いちべつしながら、微笑む綺咲先輩に大してそう答えた。

 忘れかけていたと思うけど、楽しそうに話す先輩を見て周りは言葉を失っていた。


 ……でもさ、前々からこういうやり取りしてるのに毎回この反応ってなんなの?


 俺を睨み、先輩が話すと驚愕きょうがくし、先輩が笑えば絶句する。これ、普通最初だけだよね?

 えなに、皆毎回記憶消えてるの?もしそうなら精神科が重労働だなあ〜(棒)


 そんなことを考えて俺が遠い目になっていると、先輩が疲れたように肩をすくめる。


「別に良いわよ、釣り合いみたいなの。自分自身の評価は気にするけど、そのせいで話す相手まで制限されるのはなんだか面倒じゃない?」


 そう、綺咲先輩は結構自由を求める人である。出会った理由もここに関係したり。

 だから、普通こういう人は周りの視線を気にするけど、先輩は全く気にしない。


 俺と同じだね!(歓喜(棒))


「まあ俺も同じ気持ちですね。まあ、俺の場合は自身の評価さえ気にしてませんけど」


 違う形であれど周りの視線が凄いからこそ分かり合う部類。なお、その形(震)


 するとそんな俺に、綺咲先輩はなにやら羨望の眼差しを向けてきていた。


「そういうの羨ましいわ……私、どうも実家の期待を裏切れなくて……」


 ちなみにだけど、先輩はこれまでの俺の人生を粗方あらかた知っていたりする。

 実は俺が実家を追い出されたことに、何もいを感じていないということも。


「まあ、それはそれでいいんじゃないですか?俺の元実家よりは融通ゆうずうは聞くんでしょ?」


 俺みたいな人間になるのは、正直あまりいいことでは無い。

 だから歪みかけている先輩をさとすようにそう言うと、先輩は「そうね」と頷いてくれた。


<キーン コーン カーン コーン>


「──あっ、予鈴なっちゃった……じゃあね高嶺くん。またあとで」

「はい、綺咲先輩。またあとで」


 長々と話していたら昼休み終了の予鈴が鳴ったため、颯爽さっそうと去っていく先輩。

 俺はそんな先輩の背中を眺めながら、充実感に笑って突っ立っていた。



 ……どうだっただろうか。

 急な話だっただろうけど、今回は''落ちこぼれ''な俺と高嶺たかねの先輩の話を展開してみた。


 もし気に入ったのであれば、この物語を幅広くしていくかもしれない。

 その際は、結構貼られた伏線ふくせんの答え合わせまで……ね?


 ……まっ、ダイレクトマーケティングだけどねこれ(ゲス顔)

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