【ネトゲ嫁から恋愛相談された翌日から、声が出せない幼馴染がやけに甘えてくる。】
2022/11/11ショートストーリー
時系列:本編第一話の5ヶ月前(中三時代)
題【SS:勉強会での糖分摂取】
(此花二乃 視点)
11月中旬。風の冷たさがはっきりしてきて、あまり外に出たくない今日この頃。
私は今、暖房の効いた自室の床に座り、座卓の上に教材を広げて受験勉強をしています。
……しかし、調子としてはあまり芳しくはありません。私は勉強がとても苦手でした。
特に数学はもう……。
「………」
えっと、記号を含んだ……方程式?が二つ、縦に並んでいます。これは、えっと……
……………………。
「えーっと?……ああ、連立方程式か」
するとそんな私に気がついてか、隣の家に住んでいる幼馴染で私の想い人、如月一樹くん。私しか使っていませんが、通称かずくんが体を近づけて覗き込んできました。
片思いしている人の顔が急に近づいてきたので、少し顔が熱くなってしまいます。
ですが、彼が浮かべているのは真面目な顔。
それも当然でしょう。成績優秀なかずくんはわざわざ、勉強が苦手な私のために勉強を教えてきてくれているのですから。
ですから、(真面目な顔もカッコイイなあ)と思いつつも、緩みそうになる頬を引き締めます。
「………」
それにしても、レンリツホウテイシキ?
首を傾げる私を見て、かずくんは数学の教科書を捲って例文を指さしました。
「ほら、これ。まず、どっちかの方程式を解くんだよ。大体は記号が一つしか無い方な。この問題なら下の式」
声が出せない私の事をよく見ているのか、何を考えているのかすぐ察してくれます。
彼にとっては些細で当たり前な事なのかも知れませんが、私はそれがとても嬉しく思います。
さて、話を戻しましょう。
かずくんの説明に、私はコクコクと頷きます。
「1回解いてみ?方程式は確かいけたよな」
頷き、言う通り下の方程式をまず解きました。
記号=数字の答えが出てきます。方程式自体は一年生の時にかずくんのお陰でマスターしました。
「えっと……よし、合ってる。じゃ、この答えを上の同じ記号に代入……そうそう、いいぞ」
問題を進める度に、気分よく頷くかずくん。
そんなかずくんを見る度に嬉しくなり、私も集中して解いていきます。
「………?」
最終的に出た答えを解答欄に埋め、合っているかどうかをかずくんを見て尋ねます。
「合ってる。やったな、二乃」
「………!」
ニカッと笑うかずくんを見て、嬉しくなって頬が緩みました。
……と、同時に疲れで力が抜けます。暫く、集中しても時間が保ちそうにありません。
「おつかれ、二乃。良い時間だし、そろそろ休憩するか」
かずくんの言葉に頷き、座卓の真ん中に置いているお菓子に手を伸ばします。
今日、11月11日にピッタリな細い棒状のお菓子。
それの袋を開き、一本取ってかずくんの方にも差し出します。
「お、さんきゅ」
「………♪」
パクリとひと齧りし、チョコレートが脳に浸透する感覚がします。美味しい。
かずくんもひと齧りして、満足気な顔をしています。
そのまま一袋分のお菓子を完食してゆっくりした後、私たちはまた勉強を再開しました。