何者かになりたいという人間の普遍的な欲望が、ボカロを通じて昇華する

ボーカロイドとはなんなのかよく分かっていなかった私は、この作品を読んで、まさかアマチュアで音楽プロデューサーにまでなれる時代になっていたとは!と今更のように衝撃を受けました。

この物語は、ボカロP(プロデューサー)として互いの存在と作品を知っていたサワーPと246Pが、Twitterでメッセージを送りあい、実際に会うところから始まります。
二人の会話を読んだ時、私は、自分が生きた時代とは全く別の感覚を持つ若者のように感じて、これを書けるあとみく様の若々しい感性と、音楽を言葉で描写する語彙力、表現力に圧倒されました。

ただ、どんなに時代が変わっても、人間というのは常に、何者かにならなくては!という焦燥感と孤独を抱えて生きているのかもしれない。

ボカロPとして、音楽で繋がり始まった二人の関係の結末が正解か不正解かなんて誰にもわからないけれど
何が自分にとって幸せなのかは、他人が決める事ではなく、自分で選ぶものなのだと考えさせられる作品です!