小さなつまづきが大事件のように感じる十代の頃。
受験という言葉の重みに圧し潰され、数字という結果だけに縛られる心。
そんな繊細な中学生の心情が、とても伝わりやすい言葉で綴ってあります。
失敗があるから学ぶことがあり、そこから得ることがあるのは、大人になってから分かるのかも知れません。でも少しでもそれを知ることで、今の自分を縛っているものから楽になれれば、頑張っている自分を認めてあげられるようになるのでは。
失敗があったから成功がある。それは主人公の叔父が焼いてくれるホットケーキも同じ。
不安の中にいる人に向けてそっと背中を押してくれるようなあたたかい物語です。甘い匂いが漂ってくるような優しい時間を一緒に味わってみてはいかがでしょうか。
両親の愛に応えることと、両親の期待に応えることは、全くの別物だ。
勉強をし続けることと、成績を上げ続けることも、全く違う。
前者は何時だって自分のため、義務じゃない。
好きに愛して、好きに勉強する。嫌いなものは捨てていい。
けれどそれは、
「親がかわいそう」「親になったら大変さがわかるわよ」と、
「大学生になってからやればいいじゃない」「今こなさないと人生真っ暗よ」と、
『義務』をつきつけて邪魔をする他人がいる。
努力は『時間』と『精神』(あるいはお金)をベッドにする、結果が不確かなギャンブルだ。
費やしても後悔しないと心から思えることに、熱意を注げばいい。したくないことに精神をすり減らさないよう、小細工しておこう。
人生は何があるかわからない。今の私たちには良くも悪くもこの意味がよくわかると思う。
「ネットは良くない」「引きこもりは良くない」とかつて言っていた人は、
今の「自粛」や「リモート」の世界を想像できなかっただろう。
例え今失敗したとしても、時を経て、ひょんなことで『成功』することもあるかもしれない。作中に出てきた、ホットケーキみたいに。