おうち時間のすすめ

ペンちゃん

第1話 犬に始まり犬に終わる おうち時間

 おうちで過ごす時間はおすすめの過ごし方がある。

 まず最初に朝起きご主人を起こす。

 朝の食事を貰い遊んで貰う為だ。

 

 ワンワンワン、ハッハッハ

 

 顔を舐めてやるとご主人は嬉しそうに起きる。

 そして遊んでもらう為に飛びかかり続けるのだ。

 しかし…それでも遊んでくれるのは一週間にたったの2日だけ…。

 後は僕を置いてどこかへ出掛けてしまうのだ。

 寂しい。

 

 「コロ、行ってくるね」

 

 このコロと言う名は僕の名前だ。

 コロコロしてるからと言う理由らしい。

 

 ご主人がいなくなってしまった。

 でも、やる事はあるまずは玄関の前に座りご主人を待つ。

 でも…だめだ…全く戻ってくる気配がない。

 なのでここは日向ぼっこをおすすめする。

 場所はリビングの窓近く。

 ここならご主人が帰って来るのが見えるし、暖かくて気持ちいいのだー。

 

 そしてご主人の帰ってくる音を聞きすぐさま駆け寄る。

 そうすればここで頭を撫でて貰得る。

 それに運が良ければ散歩にも連れて行ってくれる。

 

 おうち時間の使い方は他にもあるご主人の上に乗り甘えるのもおすすめだ。

 

 「ほんとにコロはお父さんが好きね」


 そしてもう一人この家には住人がいる。

 僕より階級は下だが、ご主人に気に入られている奴だ。

 気に食わない。

 ご主人は誰にも渡さない。

 そう僕はご主人の上で頭を撫でて貰うのだ。

 

 時は遡りまだ僕が子供だった頃。

 雨が降る道路の端。

 僕は捨てられていた。

 ご飯も無く途方にくれ僕を捕まえようとする人間から逃げ回っていた。

 もしそれに捕まれば殺されると聞く。

 絶対に捕まる訳にはいかない。

 

 でも…そんな生活も長くは続かず限界が来てしまうものだ。

 疲れた…そう僕が眠っていると人間が現れた。

 もう、生きるのも疲れた…このまま捕まり殺されるのだろうか?

 恐怖が僕を奮い立たせる。

 

 グルルル…ワン!

 

 でも、体も小さく子供だった僕に人間は恐れず抱き上げた。

 そして、吠える気力も無くなり視界が暗くなっていく。

 

 それから僕は病院に連れて行かれた。

 ちなみに病院というものは当時は知る由もなかったのだがどうやら拷問施設らしい。

 あそこに行って、いい思い出が未だにない。

 

 それから僕はご主人に保護?されたのだ。

 

 …


 時は過ぎ数年。

 僕に部下ができた。

 それは小さな赤ん坊。

 玲奈と名付けられた友の事だ。

 こうして上から見ていると可愛い。

 

 しかしそう思ったのは一途期のみ。

 玲奈は成長を遂げ、目を離すとすぐ危ない事をする様になった。

 高い所に登ろうとするし、物を投げる。

 尻尾を引っ張ってくるし背中に乗ろうとしてくる。

 そしてすぐ転けて泣く。

 全く、僕がいないと駄目な妹だ。

 

 そんなこんなもありながら僕は妹にいろいろな事を教えた。

 遠吠えのし方やしっかりとした4足歩行の歩き方。

 夏の暑さのしのぎ方や雪の楽しさ、僕が教えられる事は全て教えた。

 僕らはそんな暮らしをしていたら、気づいた頃には二人共、親友となっていた。

 

 そして彼女はそうして育ちすぐに僕の背丈を追い抜いて行った。

 玲奈が小学生時代。

 僕と散歩をしているとボロボロの子猫が一匹、僕達にすり寄って来た。

 昔を思い出す。

 この子もきっと僕と同じ様に捨てられたのだろう。

 助けたくなった。

 

 僕が子猫の汚れを取ってやっていると僕の親友である玲奈はその意志を汲み取ってか子猫を一緒に連れ帰ってくれた。

 

 「いい? コロ。

 お母さんとお父さんには内緒だよ?」

 

 ワン!

 

 約束だ、そう誓い合ってから僕達の秘密は家に入ってそろりそろりと歩いていると子猫が鳴いてしまいすぐにばれた。

 

 「全く、お父さんの娘ね」

 「おお、別にいいぞ。

 飼いたいなら飼いなさい」

 

 しかし、そこはさすがご主人だ僕を助けてくれただけの事はある。

 こうしてまた、家族が増えた。

 

 「コロ! 行くよ!!」

 

 年に一度、家族全員でのピクニック。

 玲奈はボールを持ち遠くへ投げる。

 それをすぐに取りに行く。

 

 楽しい遊びだ。

 

 一方、子猫はシロと名付けれ可愛がられている。

 今もご主人の膝の上でゴロゴロと喉を鳴らせているのだ。

 シロだから許している。

 

 ピクニックは楽しい。

 でも…。

 

 「コロ、もうおうちに帰るよ…」

 

 嫌だ! 断固拒否する。

 

 …

 

 シロは成長すると家からの脱走が得意になった。

 いつも注意するのだが言う事を聞きもしない。

 何時もトイレの窓から外へ抜け出して一人、散歩しているのだ。

 悪いやつである。

 もう最近では諦め外に出て行くのを黙って見る様になった。

 

 しかし…僕はそんな自分に後悔する事になる。

 ある日、シロが帰って来なかった。

 ご主人と母さんはシロの写真を持って探し。

 僕と玲奈も必死になって探した。

 その結果、一つの事実に辿りつく。

 白い猫が道端に倒れているのが見える。

 

 「シロ!!」

 

 シロは事故に会い引かれ動かなくなってしまっていた。

 信じたくは無い。

 でも匂いが毛の色が今目の前にいる猫がシロであると嫌でもわかってしまう。

 

 クゥーン

 

 鼻で突くが反応が無い…。

 嘘であって欲しかった。

 胸が張り裂ける程に痛くやり場の無い憤りや悲しみが溢れ出す。

 

 その夜は街中に犬の遠吠えがいつまでも響き続け、悲しみに暮れ玲奈と共に痛みを分かち合い一緒になって眠った。

 

 …

 

 玲奈が中学へと上がった頃。

 僕の体は少し体力が衰えて来たらしい。

 少し走っただけで、疲れてしまう。

 でも、玲奈との散歩は欠かさない。

 僕達は親友だから。

 ずっと一緒だ。

 

 だから、玲奈の悲しそうな顔は見たくはない。

 悲しい時は何時も寄り添って顔を舐める。

 笑顔がみたい。

 笑って欲しいのだ。


 「コロ…実はね…」

 

 悲しい時は何時も僕がそばにいるよ

 

 

 「お願いです先生!

 コロを助けて下さい!

 昨夜からもう何も食べず、ぐったりしていて!」

 

 あれ…遠くで玲奈の声が聞こえる…。

 泣いている?

 行かなきゃ…。

 

 もう僕も15才だ。

 

 「もう出来るだけの事は…」

 「お願いします! 

 私の大切な家族なんです!

 お願いします…お願いします」

 

 その日、僕は家族皆と一緒に眠る事になった。

 嬉しい。

 ご主人や母さん、そして玲奈と一緒にいるんだもの。

 

 皆の顔はうっすらで見えないけど…。

 まだ泣いてる。

 泣く顔は見たくない笑って。

 グッタリしながらも僕は体を起こし玲奈の手を舐めた。

 

 「くすぐったいよ コロ」


 笑ってくれた…。

 でも疲れたな…眠い。

 きっと明日はもっといい事があるよね……。

 皆とボールで遊んだり散歩に出かけたり。

 ピクニックをしたり…。


 その日、僕は息を引き取った。

 

 今まで辛い事、悲しい事もあったけど僕は皆に会えて幸せだった。

 今までありがとう…。

 

 

 おうち時間…。

 僕は一生を通してその真理、答えにたどり着く。

 

 おうち時間とは…大切な家族と一緒にいる楽しい時間の事だと…。


 

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