あとがき

 ー本編についてー


 この作品のテーマは記憶と復讐。

 死者は蘇らず、人は過去に戻れない。善悪でくくれないのならば、一体誰が死者を救ってくれるのか。


 善悪の境界線が曖昧あいまいになり、正義や善性と呼ばれるものがただの言葉になってしまった時、人は何を行動の指針にするのか。


 復讐を請け負わない殺し屋、立花。

 記憶を失くした復讐者、翔太。

 死後の世界を信じない子供、湊。

 国家公認の殺し屋、ペリドット。


 異なる価値観や考え方を持つキャラクターの群像劇です。


 序盤の立花と湊は、対立状態でした。

 立花は裏社会の抑止力という曖昧な役割について明確な答えが出せず、湊は過去のトラウマから目の前で人が死ぬのが堪えられない。


 湊が翔太を拾ったのは、大きな転換点でした。

 翔太は緩衝材となり、潤滑油となり、橋渡しをして、二人の関係に答えを与えて行く。


 ペリドットとノワール、天神兄弟は物語のキーマンでした。

 敵として現れ、時には味方として立ち回る。そして、立花や翔太、湊に避けては通れない問いを投げ掛ける。


 立花とペリドットは反対の立場ですが、湊とノワールは非常に友好的な関係を築いて行きます。互いの存在が、等身大の自分でいられる唯一の居場所だったのですね。


 余談ですが、翔太は最終話の辺りで死ぬ予定でした。





 ー登場人物についてー



 ■立花蓮治たちばな れんじ(26)

「祈り方なんぞ知らねぇな。愛だの救済だの、俺の世界じゃいつも品切れでね」

 19.空を見上げて夢を見る ⑹鉄火場

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 作中最強の実力者。最速のヒットマン、裏社会の抑止力と呼ばれるハヤブサの三代目。金色の双眸を持ち、右目の下に群青の鷹の刺青がある。普段は右目に医療用の眼帯をしている。


 幼少期が悪環境だったので、厭世家で、愛想もなく、言葉選びが下手。人間不信の傾向があり、特に近しい人との接し方が分からない。


 湊や翔太に自身の過去を重ね見ており、幸せな子供時代というものを示して欲しいと願っている。これが大切だと言えるたった一つの何かが欲しい。


 銃器の腕前や戦闘センスは天性のものだが、真面目で努力家。

 幼い頃にろくな食事が出来なかった反動で、料理が趣味。適当な料理をする湊に怒る。



 ■神谷翔太かみや しょうた(21)

「人を頼るのも、勇気だぞ。我慢ばかりしていると、本当に困った時に声が出ないからな」

 12.星に願いを ⑺未熟な刃 

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 記憶を失くした復讐者。


 近接戦闘においては実力者で、フルコンタクト空手の全国大会で優勝する程の腕前を持つ。自分を救ってくれた湊に感謝しており、力を貸そうとする。


 妹を自身の手で殺害しており、後悔と罪悪感から情緒不安定な時がある。過去のトラウマをフラッシュバックして錯乱した時、湊の呼び掛けで意識を取り戻す。それは彼を亡くした妹と重ね見ている為である。


 共感能力が高く、お人好しなので事情があればどんな相手も受け入れる。真面目で素直なので、特に年上に好かれるタイプ。立花と湊を中心として凡ゆる場面で緩衝材になる。


 作中では狂言回しであると同時に、信頼出来ない語り手。



 ■蜂谷湊はちや みなと(18)

「大切な人がいる。生きていて欲しいし、幸せであって欲しい」

 19.空を見上げて夢を見る ⑵アンサー

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 SLCとの事件をきっかけに海を渡って来た少年。見た目は天使のような美少女。脳科学の研究者で、他人の嘘を見抜く能力を持っている。


 狂気的な努力家だが、必要無いと判断したことには徹底的に手を抜くので、料理が適当で音痴。


 努力する人が好きで、自他共に認めるエゴイスト。誰にも死んで欲しくないと願っている。作中のポジションは、墓守。


 双子の弟がいる。

 特殊な家庭だが愛されて育ったので、根が素直で偏見が無い。バスケットボールやサーフィン、読書など多趣味。



 ■天神侑てんじん たすく(26)

「死ぬ理由なんか何処にでも転がってる。だけど、生きる理由ってのは中々見付からない」

 18.空虚な祈り ⑻命の天秤 

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 国家公認の殺し屋、ペリドット。作中随一の身体能力を持ち、基本動作がパルクールという化物。


 弟の出生と共に母を亡くし、父が暴力的になり、弟を庇いながらアルバイトを掛け持ちする。父が殺されて施設に送られ、弟を守る為に国家公認の殺し屋となった。


 新は唯一の肉親で、何処か遠い所で笑って幸せになって欲しかった。何が大切かと問われれば、彼は弟と即答する。けれど、その弟を遠去けるのは、同じ世界に来て欲しくなかったから。突き放すことが、彼の愛だった。


 運命に翻弄され、敵として立ち塞がるが、本質的には懐深く繊細な感性を持った大人。子供好きで、特技は手品という裏設定がある。



 ■天神新てんじん あらた(21)

「真の幸福に至るのであれば、それまでの悲しみはエピソードに過ぎない。……頑張れよ、ミナ」

 8.地獄巡り ⑺踏み出す一歩

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 ノワールと呼ばれる駆け出しの殺し屋。まだまだ未熟で、若さ故に無鉄砲な所もある。兄同様に身体能力に優れ、感覚が鋭敏。趣味は油絵、甘いものが嫌い。


 突然姿を消した兄を案じ、この世界に入った。街の中で一人ぼっちのミナを見付けた時、捨て犬に見えて放っておけなかった。否定も肯定も追及もせず、ただ味方でい続けてくれた湊を大切にしている。


 翔太とは悪友に近い関係。


 他人の嘘を見抜けるノワールだが、湊のようにそれを苦にしていない。自分の能力を過小評価しており、楽観的に捉えている。


 新は湊と一緒にいる時間が心地良かった。彼の見る夢に自分が含まれていることが嬉しかった。それが友情でも愛情でも、ノワールは湊が大切だった。ただ、それだけ。その為に彼は走ったのである。



 ■蜂谷航はちや わたる(18)

「切り札を残して負けるなんざ、馬鹿のすることだぜ」

 16.繋いだ手 ⑹乾き 

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 湊の双子の弟で、潜在能力はペリドットに並ぶサラブレッド。野生動物のように身体能力が高く、超感覚的知覚と称される程に勘が鋭い。恵まれた容姿は、顔だけで一生食って行けると評価される程である。


 湊とは相補的な関係。

 性格は苛烈で、言葉遣いも粗野だが、繊細な感性を持つ。人間関係で挫折した過去があるので、ひねくれ者。


 作中のポジションは、ヒーロー。多少のことは努力と熱量で乗り越えていく。

 バイクとバスケットボールが趣味。



 ■幸村歌恋ゆきむら かれん(31)

「私は必ず、貴方からこの子の親権を取り上げるわ。子供を守るのは、大人の務めなのよ」

 12.星に願いを ⑼夜空を辿る

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 検事上がりの弁護士で、正義感の強い女性。

 過去に性犯罪に関わる事件を担当し、犯人を起訴する為に被害者に協力を求めた。しかし、何処からか情報が漏れ、被害者が自殺。罪の意識から検事を辞め、弁護士を志した。

 湊を少女だと思い込んでおり、可愛がっている。



 ■桜田健斗さくらだ けんと(26)

「俺は今、勤務外なんや。堪忍な」

 12.星に願いを ⑼夜空を辿る

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 大阪弁を話す街のお巡りさん。

 大阪では刑事だったが、未成年をレイプした上司を殴って左遷させられた。そのことから未成年である湊や紬を放っておけない。

 お人好しであるが、曲者。秘密裏に湊に協力する。

 正義とは何なのか答えを探している。



 ■笹森春助ささもり しゅんすけ(25)

「ヤクザが義理人情失くしたら、お終いや」

 15.トーチカ ⑻他人の覚悟

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 大阪の極道、笹森一家の若頭。

 人情に厚く、先見の明があり、考え方が柔軟。飽和する情報社会において、極道の未来を憂いている。



 ■李嚠亮り りゅうりょう(25)

「もしも何かあれば、僕は持てる限りの武力を持って、貴方を粛清する」

 13.夜明け前 ⑷鳩首謀議

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 中国マフィア青龍会の若頭で、湊とは大学の同級生。

 冷静沈着で汚れ仕事を厭わない。湊を家族のように感じており、力を貸す。



 ■近江哲哉おうみ てつや(65)

「どんな大層な理由があっても、死んだら終わりだぞ」

 6.フィクサー ⑷道標

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 先代ハヤブサで、立花の師匠。

 飄々とした老人で、元伝説の殺し屋。翔太に護身術や暗殺術を教えていた。後継者である立花を気に掛けており、第一線を退きながらも後始末など手を貸す。

 現在は山奥の田舎で悠々自適な隠居生活を送っている。





 ー各話ー



【1.宴安酖毒】

「お怪我はありませんか、お姫様?」

 ⑶路地裏の死神 立花蓮治


【2.正義の矛】

「彼女の行いが正しかったのか、間違っていたのか。意味があったのか、無かったのか。……君がその目で見届けろ」

 ⑸人を呪わば 蜂谷湊


【3.名もなき花】

「俺は、地獄にも花が咲くことを知っている」

 ⑹名もなき花 蜂谷湊


【4.小さな掌】

「この世の終わりじゃない」

 ⑸ヒーロー 蜂谷湊


【5.夜のパレード】

「君の苦しみを一緒に背負わせて。一人で抱え込むと時々、道を間違えるから」

 ⑺祈りと約束 蜂谷湊


【6.フィクサー】

「たった一人でも、心の底から信じてくれる奴がいれば、それだけで救われる。なあ、翔。お前もそうだろう?」

 ⑺降り積もるもの 立花蓮治


【7.ツナグ】

「家族が大切だ。家族を守る為なら、俺は何でも出来る」

 ⑻紡ぐ 蜂谷湊


【8.地獄巡り】

「復讐に未来は無いぞ。ちゃんと考えて、自分で責任を取れるマシな未来を選べ。テメェのことも、周りの人間のことも勘定に入れろ。復讐だ何だ言うのは、それからでも遅くねぇぞ」

 ⑷波間を揺蕩う 立花蓮治


【9.毒と血】

「毒を食らわば皿まで、だ。清濁合わせ飲む覚悟も無く、世界と戦えるとは思わねぇ」

 ⑹血の一滴 立花蓮治


【10.暴力の世界】

「銃も刃物も、テメェの拳も武器だ。大切なのは使い方を知っているということだ。それを何の為に使うのかは、お前が決めろ」

 ⑻声 立花蓮治


【11.ゲルニカ】

「俺は、罪には罰が必要だと考える。――家族には、幸せでいて欲しいからな」

 ⑺盾と矛 ペリドット


【12.星に願いを】

「次は、ナイフを握る前に呼んでくれ。そしたら、俺が君の代わりにそいつを殴るから」

 ⑺未熟な刃 蜂谷湊


【13.夜明け前】

「お前が俺の未来を守るってなら、俺がお前の道を切り開く」

 ⑽明けの明星 神谷翔太


【14.正義の所在】

「こいつに手ェ出すなら、お前は俺の敵だ」

 ⑼蟷螂の斧 立花蓮治


【15.トーチカ】

「悲劇は復讐者も生むが、稀にヒーローも生み出す」

 ⑽指切り 立花蓮治


【16.繋いだ手】

「何度でも、死刑台に送り返してあげるからね」

 ⑻牡羊の燔祭 蜂谷湊


【17.名前のない地獄】

「閉じ籠って心静かにいられるなら、誰も苦しみはしなかっただろうさ」

 ⑹引火点 ペリドット


【18.空虚な祈り】

 "You light up my life."

 お前は俺の人生に光を齎してくれた。

 ⑸最愛 ノワール


【19.空を見上げて夢を見る】

「ヒーローは必ず勝つからさ!」

 ⑸光明の悪魔 蜂谷湊


【20.泥中に咲く】

「帰り道くらい覚えとけよ、クソ野郎!!」

 ⑶小さな奇跡 立花蓮治





 ここまで読んでくださり、また登場人物を愛し、わたしの拙い創作の助けをしてくださった読者の皆さまに、心から感謝を申し上げます。

 皆さまの未来がどうか明るいものでありますように。


 ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

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Ace in the hole. ―最後の切り札― mk* @mk-uwu

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