皇帝と賢者
人生
技術とヒマを持て余した我々による戯れ
それじゃあ父さんたち行ってくるからな。
母さんたちがいないからって羽目はずすんじゃないわよ。
――両親が懸賞で当たった一泊二日の温泉旅行に出かけ、俺は自宅で一人になった。
車庫から車の発進する音を聞き届けて――しばらくして。
「俺は、自由だ……!」
両親不在の自宅。夜まで起きていても叱る親はいないし、ゲームだってし放題。お菓子もアイスも好きに食べられる――とまあそんな小学生みたいな悦びが脳からつま先まで一通り駆け抜けてから、男子高校生である俺は真っ先に二階の自室へと駆け上がった。
そこにはつい昨日届いた、新作のゲーム機とソフトがある。
抽選販売に見事当選し、購入することが出来たのだ。
届いたその日のうちに遊びたかったのだが、せっかくならリビングにある大画面テレビでプレイしようと両親がいなくなる今日まで我慢していたのである。
……というのも、「そんなものを買うお金があったの?」とたずねられると困るからだ。
実は先日、SNS上のキャンペーンに何気なく応募したところ、通販サイトのギフトコード10万円分が当選したのである。それで試しに抽選販売に応募し、見事ゲーム機の購入権利も得て――親に内緒で購入して今に至る訳だ。
多少後ろめたく――代わりに、懸賞に当たったということにして、両親には旅行券を贈った。
そして本日、両親が旅行に出かけ、俺は自宅に一人――
まさかここまでコトがうまく運ぶとは思わず――上手くいったことに優越感を覚えて仕方ない。
これで彼女の一人でもいれば家に呼べたのだが――その代わりに!
「家に親がいないことを打ち明けた結果、先輩(成人済み)から借りたえっちなブルーレイ……」
正直、新作ゲームよりもこっちの方が楽しみで、今すぐにでもリビングで鑑賞したいところだ。
ゲームならノートPCのモニターにつなげればいつでも部屋で遊べるのだが、ブルーレイの方はそうもいかない。俺のPCはディスクプレイヤーが備わっていないのである。まあそれもあとで思いついて注文したし、なんならこの新型ハードで再生できるのだが……。
「リビングで観るのはアレな気もするが……万が一帰ってくる可能性もあるし」
しかし、やっぱり大画面で観てみたい。
今すぐ観たい。
(でもそれで賢者タイム突入しては今日がもったいない……)
夜のお楽しみということで、まずはゲームを堪能することにした。
■
「……見ているな?」
夜、俺はリビングで一人、真っ黒なテレビ画面に映る自分の顔を睨む。
家の中には誰もいない。画面に映る背景――キッチンの方も無人だ。
しかし、いざプレイヤーにブルーレイを挿れようとしたところで、俺は不意に、人の気配を感じたのだ。
……気のせいだろう。罪悪感、後ろめたさがそういう錯覚を生んでいるのかもしれない。
しかし、しかしだ。
考えてもみてほしい。ギフトコード(それも10万)があたって、おまけに新型ハードの抽選販売にも当選?
親が出かけて行ったのは俺の演技のたまものだとしても……さすがに、出来すぎてはいないか?
さっき夕食を食べながら観ていたテレビ番組……一般人にドッキリを仕掛けて、それをモニタリングするバラエティ。
……実はこれ、ドッキリじゃないのか?
誰かが俺を監視しているのでは? どこかにカメラがあるのでは?
テレビでなくても――エロビデオくれた先輩が仕掛けているのでは?
実はこれ、動画サイトで生配信されていたりするのでは?
……見ているな? お前、俺を見ているな?
――その夜、俺は家の中にカメラがあるんじゃないかと疑って過ごし、気付けば朝を迎えていた。
目が覚めたのは両親が帰宅してからで、俺は何もしてないのになんだかとっても空しい気分になった。
これが賢者タイムか、と俺は悟った。
■
『まさか我々の存在に勘付くとは』
『やはり地球人は面白い』
――思春期真っ盛りの少年に十万渡して一日自宅で一人きりにさせたらどうなるのか?
『検証の結果、特異点であることが発覚するという思わぬ展開になりました』
『我々による地球人類の
次回の配信をお楽しみに。
皇帝と賢者 人生 @hitoiki
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