第5話 雲の気持ちになってみた



気付いたら、空にポッカリと浮かんでいた。


向こうが透けて見えるぐらいの、生まれたばかりの小さな雲として。


ずっと離れたところに、ほかの雲たちが浮かんでいる。



風が吹いて彼らの方に流されたが、なかなか近づかない。


どうやら、彼らも同じ方向へ流されているようだ。



地上を見てみた。


ゴミゴミして、汚い街だ。


誰も空を見上げていない。暑すぎるのかな。


お、川の上を通過~♪などと鼻唄混じりで地上を眺めていると、

いつの間にか他の雲達が近くにいた。



合体してみた。


大きい雲になったので、強くなった気がした。


そしたらどんどん集まってきて、入道雲になった。


立派な入道雲になったのが誇らしくて、みんなでもくもく威張った。



いろんな雲にいろんな話を聞いた。


雲は、最期は雨になってその生涯を終えるらしい。


そして、世界には干ばつで苦しんでいる国があるんだって。


それなら私は、干ばつの地域で雨になろう、と思った。



みんなと別れ、風に乗って出発した。


「長旅だから」とみんなが雲を少しずつ分けてくれたので、体がちょっと大きくなっていた。



時々、体をイヌやネコの形に似せて遊びながら

(誰か見てくれてるのかな?)


風に乗ってどんどん進んだ。




流されながらも、少しずつなら自分の行きたい方向に

進めるようになった。体が大きくなったからかな。




そうこうするうちに、海に出た。


テンションがあがった。


ぅおっしゃーーーーーー!!!!と思った。


が、しばらくすると飽きた。


海は広すぎる。日にちも時間も距離もわからなくなった。




なんだか体が重くなってきた。ヤバい。


初め、このままでは海に落ちてしまう、と思った。


でも違った。私は雨になろうとしているのだ。



まだダメだ。干ばつ地域にたどり着いてない!!


海に降って、何の意味がある!!と思ったが、


きっと何かしらの意味はあるのだろう。そう思うしか無い。



でも、どうせ辿り着けないのなら、やっぱり街に降って


たくさんの傘の花を見たかったな……




───────────────────────────



むかーし、某アホアホ妄想ブログに載せていたものを、ちょこっと直して掲載。

タイトルどおり、雲の気持ちになってみたお話です。なってみたから何なんだ、って感じですが。


夏になったらこっちにも載せようと思っていたのでした。思い出せてよかった。

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短編集? 霧野 @kirino

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