終幕

「ねぇキミ、キミには何か叶えたい願い事ってないの?」


 心の隙間を抱える者の前に、その青年は現れる。金の鎖に繋がれた、七つの珠のアクセサリーを揺らしながら。

 しかし少し考えてみると良い。その青年の出現と、その青年が身に着けているアクセサリーを。

青年は心の隙間から心の隙間へと、音もなく影もなく時空をも超えて現れる。

モフモフのお洒落なアクセサリーも、いずれも不浄な鳥の頭の擬態に過ぎぬ。始終クチバシを蠢かせ、外宇宙の名状しがたき符牒を唱え続けている。



 余人が抱える果てしなき願望を叶える青年。その本性は余人には窺い知れぬ、名状しがたき存在の眷属である。彼もまた大いなる邪神「道ヲ開ケル者」の願いのしもべに過ぎない。人々の蠢くさまを嘲笑しながら彼は舞う。おのれの心に密かな願いを叶えながら。


 願いを叶えると嘯く輩には心せよ。七つの鶏頭を首に捧げる者の言葉に耳を傾けるな。確かに彼は耳にした願いを実現させる力を持つ。しかしその願いが真に求めていたものか。事が進んでから考えては遅いのだ。

 願いを叶えるは異形の神の使いにあらず。おのれの心の動きにて願いを叶えるべきなのだ。異形の神に縋れば異形に魅入られるだけなのだから。


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キミの願い、叶えてあげる! 斑猫 @hanmyou

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