作者 あとがき

 拙作『ゴートラスタ島で三日月を伸ばしたくて』は、杜松の実さん主催の自主企画『【カクヨム版解説編集所】解説を書きたい!書いてもらいたい!!』に参加させたものです(2021年3月)。


企画URL https://kakuyomu.jp/user_events/16816452219159502685


 レビューやコメントは皆様もご承知のこと、自らあとがきを添えておられる作者様がいることも私は知ってはおりますが、まさか、「解説」をカクヨムユーザーの手によって募集して、それを作品に添えてもらうことを狙った自主企画が存在するとは、と驚き、杜松の実さんは私の企画にもご参加くださった方でありますし、取り組んでいる作品ジャンルは違えどその作品を好きで読んだこともある、フォローもしている方ということで、私にはなじみのユーザー様。ぜひとも挑戦したいと思い、飛び込んだ次第です。



 主催者様自ら「解説を書きたい」と言ってくださり、参加してすぐに夢が叶った幸運をまずは喜んでおります。こんな素敵な解説をいただいて、私の作に添えちゃっていいのかしら? と思うところです。贅沢なことです。


 杜松の実さんの解説は、そのような趣旨で添えられたものと思っていただき、もし読んでいただけるなら、そちらも含めて楽しんでもらえたら、私としてもこのお話を一生懸命書いてよかったという気持ちになれると思います。


 小説投稿サイトは気軽に投稿できる分、どちらかと言うと自己満足に陥るきらいもあり、また中には誰にも読んでもらえないと苦しんだり、ごくごく数名のフォロワーさんたちとやりとりするだけになってしまうことも多々あります。


 それでも、本当にすばらしい作品には多くの星やコメントが寄せられていることも知っています。私としてもそれを目指して頑張ってはおりますが、自分の腕は生まれてからこの腕しか知らず、それのみでやっていますから、なかなか……といったところです。


 こういった自主企画をはじめとする他作者様との交流で、拙作を広い視野で眺めることができ、必要があれば改良を加えていくことで同じ腕でも磨かれていけば、と願っています。なので、杜松の実さんからいただいた心のこもった解説、どれほど力になったかわかりません。ここで感謝の気持ちを申し上げておきます。本当にありがとうございました。



 あとは、簡単に『ゴートラスタ島で三日月を伸ばしたくて』について述べておきます。


 「幻想エッセイ」という言葉は、私のちょっと前の作、『正常な人がただそこにいる』という短編に用いた言葉で、正確に言えば「虚構エッセイ」ということになります。事実が半分、作り話が半分でできたエッセイ、といったところです。私にとって「幻想」はぼんやりした言葉で、ただ幻惑を伴うような空想の世界で遊ぶイメージ、といった感じです。二十代の頃から小説を書いていますが、そのときからずっと、杜松の実さんのご指摘どおり、「ユーモア幻想小説」というのが私が創作している小説のジャンルであり、自分ではすべての作がそのつもりで書いたものです。


 このお話の中に書いたことは、実際、私の身に起きたこともたくさんありますし、虚構も(大いに)含まれています。


 「咎殃きゅうおう」は解説にあったとおり漢語です。私の筆名、「崇期」も実は漢語です。インターネットで調べてみればわかりますが、なにやら中国語で書かれたサイトが検索されることでしょう。ちゃんと意味のある熟語です。私は東洋哲学を学んでいた時期があり、そういう縁で漢語が大好きで、小説の中でよく使っています。私が所有しているのは三省堂の「漢辞海」。こちらでは咎殃は、「天が人にあたえるとがめ」「災難」「さしさわり」とあります。そのつもりでつけたタイトル。


 ええ、そうです。作中の作家Yは架空の作家で、ご紹介した三作のうちの二作『ホタルガの咎殃』『苦しみの苦しくない時間』は私が実際に過去に書き上げた小説で、ボツにしたつもりはないのですが、どこにも公表しておらず、もう手元に原稿も残っていません。現在のところ、私の頭の中にだけ存在する小説です。


 『三日月を伸ばしたくて』は、私も書いてはおりませんので、一体どういう内容の小説なのか、私にもわかりません(笑)。ただスティーヴン・ミルハウザーは実在する小説家であることはご存じの方もおられるでしょう。私が好きな作家の一人でもあります。


 ゴートラスタ島も架空の島です。杜松の実さんにはさすがに「ばれて」いましたね──音の響きが好きでつけただけです。実際にはない外国語を作って遊んでいたとき、それで詩を書こうと思ったのですが、詩としては「つまらない」とボツになり、もったいないのでここで使いました。吝嗇家としての本領が発揮されましたね(笑)。


 いつか、世界を苦しめている感染症問題が収まり、世界中の人たちが自由に旅行できるようになったら、私もどこかには行ってみたいな、と思います。それまでは小説の中だけの旅。


 

 楽しんでいただけましたでしょうか。これからも人を惑わせたり「なに? これ……」と悩ませたりするようなお話しか書けないかもしれませんが、その現実が私の能力で、恥じるようなことではない……と宣言してしまいました。このまま自分の歩調で励んでいきたいと思います。


         二〇二一年三月二十日  崇期

 

 


 


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゴートラスタ島で、三日月を伸ばしたくて 崇期 @suuki-shu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ