第200話 無事終わり
なんだかんだとあってから、アキヒサたちは昼食を食べ終えると帰ることになった。
子どもの引率をしているのだから、やはり日が高いうちに帰る方がいいだろう。
いつものように手ぶらで門を通り、アキヒサを見慣れない人々にやはり怪訝そうだったり、手ぶらの冒険者を馬鹿にするような態度を取られたりするのに、子どもたちがムッとしたのに「まあまあ」と取り成しながら、冒険者ギルトへ到着する。
「あら、お帰りなさぁい」
すると受付フロアには、珍しいことにブリュネがいた。
「ただいま戻りました」
ヒラヒラと手を振ってくるブリュネに、アキヒサはペコリと頭を下げる。
そんな気楽なやり取りをするアキヒサの背後で、三人組は固まっていた。
「ギルドマスターだ、やっぱり迫力あるな」
「ちょっと、押さないでよダン!」
「……」
後ろでゴソゴソやっているが、特にダンがブリュネに対して怯えている。
――なまじスキルレベルがあるものだから、ブリュネさんの強さがわかっちゃうのかな?
アキヒサはダンの怯える理由をそう推測した。
「受付ならコッチにいらっしゃい♪」
ブリュネの方は、そんな態度を取られるのも慣れたものなのか、受付口の一つから手招きしてくる。
アキヒサたちに依頼を勧めた受付の人は今いないらしく、ならばブリュネのところで確認してもらって問題ないだろう。
ところで今の時間は依頼をこなして戻ってくる冒険者でそこそこ賑わっていたのだが、ブリュネが受付口の一つにやってきたことで、その受付に並んでいた人たちがザッと退いてしまい、無人になった。
どうやら皆、ブリュネが怖いらしい。
唯一気にしないレイは、その受付へトコトコと歩いていく。
「ん!」
そして自慢げに薬草が入った袋を差し出す。
あれはレイが自分で提出する用にと、事前に少し取り分けていた分だが、残念なことに手渡すには背丈が全く足りていない。
「ほらレイ、これで届くだろう?」
「ん!」
アキヒサが抱えてやって、改めてレイがブリュネに袋を差し出す。
「あら、ありがとう♪ 依頼の処理お願いね」
袋を受け取ったブリュネが、背後にいる事務作業の人にそう告げてから、ニコリと笑いかけてきた。
「聞いたわよレイちゃん、初依頼に子どもたちを連れて行ってくれたんですって?
ありがとう、助かったわぁ」
「むん!」
ブリュネに褒められて、レイがアキヒサに抱えられたまま胸を張る。
「で、残りは鞄に?」
「はい、魔物もかなりあるので、倉庫に持って行きます。
ってそうだブリュネさん、実は……」
途中でアキヒサはひそひそ声になり、同行した三人組が非常に将来有望であることを教える。
「まあ、槍と格闘なんて、あの金ピカのスキル一覧でもかなりぼったくりの金額だったスキルよ?
使ったことがないっていうことは、生まれつきのスキルっていうこと⁉」
「ダンくんの方はどうでしょうかね?
それなりにスキルが育っているようですし。
けどキャシーちゃんの魔術スキルは、育てるべきだと思うんです。
なにより、魔術スキル持ちにこれまで会ったことないですし」
「ふぅん」
ブリュネは手元にあるタブレットを操作して、三人組のステータスを確認すると、「ホントだわ」と呟いてから、にんまりと口元を弧にした。
「ネ~エ、あなたたち♪」
ブリュネが猫なで声で三人組に呼びかけ、三人が青い顔をしているのを横目に、アキヒサは「がんばれ!」と内心で応援しつつ倉庫へと向かう。
「お願いしま~す」
「おう、兄ちゃんか」
倉庫で蛙やらいろいろを提出していると、レイがアキヒサの服をクイクイと引っ張ってきた。
「レイ、どうしたんだ?」
アキヒサが目を向けると、レイが言うには。
「おにく、さんにんにも」
「ああ、あの子たちにも取り分があるだって、そう言いたいのか?」
「ん!」
レイは今回の臨時パーティのリーダーとして、仲間へ公平に分配したいらしい。
なんという漢前な幼児だろうか。
こうして、今日の依頼は無事に終わったのだった。
金ピカ跡地の方がなんだか騒がしいのは、まあ気のせいだということにしておこう。
異世界では幼児が最強のようです~元社畜による正しい生体兵器の育て方 黒辺あゆみ @kurobe_ayumi
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