護衛

 三面さんめん九臂きゅうひのメリデが一気に地を駆り、「こっち!」と護衛の夏目さんが剥がした影を捲って僕を手招きする。影に飛び込んだ僕はメリデを逃れても、より危ない六天魔界に入ったことを知る。「出れますよ」と言う夏目さんが信用ならないのは、道に迷ったに違いないからだ。鉢合わせた黒いエリエリに追われ、僕を差し置いて夏目さんが駆け出す。「待てえぇ」と僕は詰るが息が続かない。黒影樹の茂みに突っ込んだ夏目さんが笑顔で振り返って前方を指差すと、樹々の間から出口の光が見える。「全部計画通りです」と夏目さんは笑うが、六天魔界では確実に動転していた。とはいえ助かったのも事実で、このまま護衛として雇うかで僕はけっこう真剣に悩む。


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第七十六回お題「影」

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夏目さんと僕 江川太洋 @WorrdBeans

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