おぞましい異界の存在に侵食されゆく世界で、魔を調伏する力を持ちながらも現役を退いていた夫婦が、幼い我が子を守らんと〝撤退戦〟に挑むお話。
ホラーです。いや物語としてはしっかり現代ファンタジーしていて、またタグの「厨二」「チャンバラ」というのも決して嘘ではないのですけれど、ホラー要素の濃厚さがすべてを底上げ、いやそれどころか上書きまでしているもう凄まじい作品。
看板に偽りは決してなく、でも明らかに「いやこうだっけ?」というもの浴びせられて、なのにそれが(だからこそ)最高に美味しい、という感覚です。なにこれすっごい……。
実はこれで厨二ヒーロー的な要素はしっかり揃っているのがすごい。修験道ベースの格好いい和風装備に、咒を誦えたり結界を張ったりもして、やってることそのものはワクワク感に溢れているはずなのに、でも全然それどころじゃないこのガチっぷり。
怪異の悍ましさにスケール感、なによりタイトル通りのジリ貧っぷりがもう最高でした。どこまでも泥臭くて血生臭いアクション、並の厨二ヒーローだったら事務所からNG出てるやつですよこれ!
物語そのものは至極真っ当に現代ファンタジー的アクションをやっているはずなのに、でも凡百のアクション作品には明らかに収まらない強烈な個性。打ちのめされました。なかなか書こうと思って書けるものではないですよこれは……!