#20 エピローグ
雨が降っていなかった。空は青々しく、雲一つもない。雲がなければ、空を遮るものは何もない。
海は広かった。そこには何もなく、水平線の向こうにはまだ何も見えなかった。そうやってぼーっとしているうちに、空には青を妨げる鳥たちが増えてきていることに気がついた。
帰りの船の中にも24時間、つまり行き帰り合わせて2日間、船の中に居るのである。合計5日間の旅行はまあまあ楽しかった。また、看板の上で海を眺めていると、行きの時の出来事が遠い昔のことのようだ。今度はしっかりと足を使い、倒れないようにして立っている。だから、環凪都々にもう一度支えられるなんてことは──
「?!」
倒れ込んだ。今度の波はこの間のそれとは全く違った強さがあったのだ。だからそれも仕方がない。白のワンピースが汚れるのはあまりよくなかった。
「また倒れるでしょ」
するとそこには環凪都々がいた。都々は私の手を掴んで体に引き寄せた。前と違ったのは隣には赤嶺も書籍院もいたことだ。
「あ、ありがとう。都々」
お礼を言って手を離そうとしたが、なかなか手が離れない、強い圧力で掴まれていることを認識する。
「もう見えてきてる。東京」
完璧だった水平線、何もない場所は、もはや岸が見えてきたことによって消え去った。
「アレが…東京の竹桟橋?」
「そうだよ。まだちょっと家に帰るまで大変だけどね」
「皀理っち、家はどこにあるの?」
「高校の近くだから途中まで同じ。都々も多分そうだよ」
「じゃあ一緒に帰ろ。友海もそうだから」
汽笛がなる。旅の終わりを告げる音のようだった。
我々ヒューリスティック・トートロジー carbon13 @carbon13
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