第10話

【沼田波が殺害された日のこと】


「みきー。今日も部活疲れたー」

「それなー。今日も柚にイライラしたわ。何でついてくんのあいつ」

「うちらと一緒に居たいんだよ。大目に見てあげなって。なーみ」

 部活帰りで、時計の針は7時を過ぎている。日が沈んでどんどん暗くなる時間、逢魔時に二人は歩いていた。

「今日さ、流星群くるらしいよ」

「え? 美記ってそういうの好きなん?」

「好き」

「えー、意外。笑える」

「笑うなし。見て行こ! せっかくだしさ! うち、流星群がよく見える場所知ってるんだ」

 二人は、薄暗い中、歩いて行った。

「着いたー!」

 二人は20分くらい歩いただろうか。辺りはいつの間にか暗くなっている。空を見上げると、たくさんの星がキラキラと輝いていた。

「こんな場所あったんだー! きれいだな」

 波は、瞬く星空に感動している。

「でも、一歩踏み外したら真っ逆さまで、落ちて死ぬな」

 二人の足元は崖だった。崖は20メートルくらいあるから、落ちたら確実に死ぬだろう。

「波さ、私の彼氏とったでしょ?」

「え、なんのこと?」

「とぼけないで。私が彼に振られた後、すぐに波と付き合ったの知ってるんだから」

 波が急に笑い出した。真っ暗で、顔はよく見えないが、波の笑い声だけがこだました。

「美記が彼との惚気話しているのが許せなかったのよ。嫉妬っていうのかなこれ。だって、彼と美記が付き合う前は、私が美記の一番だったじゃん。それが付き合った途端、私との付き合い悪くなるから。だから、彼にあなたの悪口言って、私と付き合うようにアタックしまくった。そしたら、彼、ほいほいついてきちゃって。笑える。

 でもそのおかげで、今みたいに二人でまた仲良く星空見えてるんだし、結果オーライじゃない?」

「波、私にあなたは必要ない。私に必要なのは彼なの」

 一つの黒い影が崖下へと落下していった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Bullying みお @mioyukawada

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ