短編 おばあちゃんとホオジロザメ  リマスター版

MrR

サメハンターとサメの戦いに理由などいらぬ



 サメと人類との戦いは生存競争。


 殺すか殺されるか。


 食うか食われるか。


 それだけの関係だ。


 にもかかわらず俺達、サメハンターとサメとはけっしてお互い理解し合えないのに心の奥底で繋がっている。


 ――とあるサメハンターの証言



 昔々、あるところにおじいちゃんとおばあちゃんがおりました。


 おじいちゃんは山へ芝刈りに。


 おばあちゃんは川へ洗濯に行きました。


「おや――アレは――」


 おばあちゃんが川で洗濯をしていると川上からどんぶらこ、どんぶらこ――


「サメ!?」


 ホオジロザメが流れてきたではありませんか。


 ホオジロザメはすぐさまおばあちゃんに狙いを定めて食らいつこうとします。


「ひょお!!」


 しかし、おばあちゃんは奇声をあげて空中に逃れ、流れる水の如き自然な動作で地面に着地し、ホオジロザメと相対します。


「まだこの辺りにサメがおったとはのう・・・・・・」


 おばあちゃんは陸に上がったホオジロザメに構えを向け、戦闘態勢を取ります。

 ホオジロザメもおばあちゃんの闘気を感じ取ったのかその場から動きません。


「ワシはサメハンター、そして御主はサメ――これも宿命――」


 おばあちゃんは嘗て、多くのサメを葬ったサメハンター。


 対するホオジロザメも多くの人間を食らったサメ。


(このサメ・・・・・・強い!!)


 サメハンターとサメが出会った時、天は雷鳴を呼び寄せ豪雨が降り注ぐ。


 生き残るのはどちらか。


 食うか食われるかの戦いが始まるのです。


「キェエエエエエエエエエエ!!」


 おばあちゃんの跳び蹴り、それに合わせるようにホオジロザメは噛みつこうとするが間一髪避けた。

 大気は裂かれ、地面は割れ、ホオジロサメの皮膚は軽く抉れた。


「これを避けるとはよるのお・・・・・・」


 流石おばあちゃん。

 まだまだサメハンターとして現役です。

 これを皮切りにサメとおばあちゃんの死闘は激しさを増していきます。


「くっ!? 竜巻まで放つか!?」


 サメが放った竜巻に飲まれるも間一髪脱出したり、


「数々のサメを屠ったこのエクスカリバ―(*おばあちゃんの手刀)で!!」


 おばあちゃんの手刀をフカヒレで受け止めたりとお互いに危うい場面が何度もありました。


「まさかここまでやりおるとは――すまんのうおじいちゃん。ワシの死に場所はここかも知れぬ」


 サメハンターにとってサメの一騎打ちで死ぬことは最高の栄誉であり、そしてサメとの戦いで死ぬことは逃れられぬ宿命でもあります。


 何を言っているのか分からないと思いますが作者である私も何を書いているのか分かりませんがたぶんそう言うことなのでしょう。


「こぉおおおおおおおお!!」


 おばあちゃんの右手に気が集中していきます。


 ――ッ!?


 ホオジロザメは何かを感じ取っておばあちゃんに向けて口から熱線を放ちました。


「なんの!!」


 熱線はおばあちゃんを包み込み、遠くにある山を穿ち、地平線を越えて大気圏を飛び越えて宇宙に飛び出し、月の表面に着弾して核爆発級のキノコ雲が起きました。


 そしておばあちゃんは――


「この勝負――引き分けじゃな・・・・・・」


 おばあちゃんの手刀がホオジロザメの脳を破壊しました。

 しかしおばあちゃんは下半身が消し飛び、気を使い果たして安らかに眠りました。


 何事かと思ったおじいちゃんはこの光景を見て全てを悟りました。


「サメハンターにとってサメとの戦いで散るのは最高の栄誉・・・・・・全力で戦った上での討ち死にならば誇りを抱いて天にいけるじゃろう。礼を言うぞ――サメよ――」


 おじいちゃんもまたサメハンター。


 おばあちゃんと同じサメハンターだからこそサメハンターの宿命も運命も誇りも全て理解していました。



 晴れ晴れとした空の下。


 家の庭におじいちゃんはおばあちゃんの墓を建てました。


 そしてその隣にはおばあちゃんが最後に戦ったホオジロザメの墓もあります。


「ワシもサメとの戦いの中で死ぬ。だからそれまで待ってくれぬかのう」


 そしておじいちゃんはまだ見ぬ強敵に備え、今日も山へ芝刈りに行くのでした。


 完

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