第5話:父・エレオノール視点

「私にはまだ一つ心配な頃があります。

 母を殺した後の父をどう扱うかです。

 プランプター公爵家の当主が妻を亡くして独身という訳にはいかないでしょう。

 ですがまた母のようなおかしな人間が後妻に入っては困るのです。

 男の子が生まれて継承権問題が起きるのも嫌です。

 だからといって単に邪魔だから無能だからという理由で殺すのはもっと嫌です。

 ガブリエルはどうすればいいと思いますか」


「殺してしまわれるのが一番簡単ですが、さすがに公爵家の当主が妻や娘と一緒に死んだしまったら、王家から密偵が送り込まれる危険があります。

 その時に夫人とディアーヌ様、ラッセル伯爵家の事も王家に知られてしまう可能性がございますので、殺さずに適当に遊ばせておくのがいいと思われます」


「遊ばせておくとは、具体的にどうするのですか」


「一つは適当にお金を与えて再婚させずに浮名を流させる事です。

 正式な結婚前にできた子供に相続権はありませんので、エレオノールお嬢様のプランプター公爵家継承になんの悪影響も起こりません。

 もう一つはこちらが選んだ女性をめとらせる事です。

 子供を産む可能性がなく、政略時にも有利になる女性を選ぶのです。

 後は最初の策と同じで外で遊んでもらえばいいのです」


 ガブリエルは本当に冷酷非情ですね。

 公爵家の当主である父の事を女好きの役立たずと割り切っています。

 まあ、私も人の事は言えませんけどね。

 確かに殺したくないとなれば、ガブリエルの策以外は思い浮かびませんね。

 それに私も王家の介入は避けたいですからね。


「そうですね、ガブリエルの策が一番ですね。

 浮名を流させている間に下手に恋愛されても困りますから、政略上有利な結婚相手を探しておいてくれますか。

 必要な資金はいつも通りダイヤモンドかパールを換金して用意します」


「まだ十分前回換金した軍資金がございますので、無理にあの商業ギルドに宝石を売る必要はございません。

 いい機会ですので、他国や他領の宝石を扱う商会を集めて、宝石オークションを開催されてはいかがですか。

 開催中に夫人とディアーヌ様、ラッセル伯爵家の皆殺しを行えば、エレオノールお嬢様のアリバイにもなります」


「ですが殺害の実行は早ければ早いほどいいのではありませんか」


「では全て同時に始めましょう。

 殺害の段取りが先に終われば殺してしまいましょう。

 オークションの準備が先に終わったら、オークション開催中に殺害しましょう」


「分かりました、全てガブリエルに任せます」


「はい、お任せくださいエレオノールお嬢様」

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