第6話:取引・エレオノール視点
「国王陛下、母と妹が流行り病で死んでしまった直後に、このようなお願いをするのは不謹慎かもしれませんが、ぜひともお聞き入れ願いたく思います」
「う~む、だがなエレオノール嬢、そなたは知らないのかもしれないが、シモーヌ叔母上には色々と問題があってな、臣籍降下させるわけにはいかないのだよ」
「恐れながら国王陛下、全て存じ上げております。
社交界で噂されているのを何度も聞いております」
「ならば王家の人間として嫁がすわけにはいかない事、分かっているのであろう」
「別に何も問題はございません。
もうシモーヌ様が御子を産まれる心配はないのでしょう。
だったら形だけ我が家に後妻として入っていただきたいのです。
その代わりと言っては何ですが、私の婿に王子をお迎えさせていただきます」
「なに、だがエレオノール嬢はラッセル伯爵家のミキャエルと婚約をしていたのではないのか、余は破談になったとは聞いていないぞ」
「あれは亡き母が私に無断で強引に進めた事でございます。
父もラッセル伯爵から借りていた遊興費を棒引きにしてもらう条件で、私の承諾なしに決めた事でございますから、私が遊興費を返せば何時でも破談にできます。
私がシモーヌ様を後妻に入っていただきたいとお願いしているのも、父の遊興を抑えたい一心でございます。
父が外に男の子を儲けでもしたら、王子を婿にお迎えできなくなりますから」
「う~む、王子王子と言うが、エレオノール嬢は誰の事を想っておるのだ」
「王子様の何方でも私は喜んで結婚させていただきます。
王位継承問題で王家が割れる事がないように、婿入り先がなく領地の割譲で王位を継がれた方ともめる事にないように、ご助力したいと思っております」
「その代わり、エレオノール嬢の自由を認めろという事かな」
「はい、王家の血を継ぐ後継者は生ませていただきますが、その後の恋愛は貴族の慣習通り自由にさせていただきたいのです。
いくら王子様を婿に迎えたからといっても、貞操を誓わされたくはありません。
それに、私が密かに生んだ子に領地と爵位を与える許可もいただきたいのです。
実際にどうなるかは分かりませんが、失敗した夫人が領地で密かに子を産むという話を社交の場で聞いた事がございます」
「驚いたな、エレオノール嬢にこれほどの度胸があるとは思っていなかったぞ」
「私も大変なのでございます、国王陛下。
プランプター公爵家の血と領地と財産を守りつつ、父に恥をかかさない方法考えながら、自分の利も確保しなければいけないんでございます。
その苦衷、察していただければありがたいです」
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