第7話:呪殺・エレオノール視点

 私が母と妹を呪殺した事に国王は気がついていなかった。

 しかも王子を送り込んで父を隠居させる気にもなっている。

 穏当にプランプター公爵家を乗っ取れると思っているから、私が少々疑わしい事をやっても調べる事もしないでしょう。


 問題は好きでもない男とベットを共にして子供を産むことです。

 パスカルが婿に来るのかフィリップなのか分かりませんが、幻覚魔術で嘘偽りを真実だと思い込ませられるのか、それとも魅了魔術で言いなりできるのか。

 その辺は今後の研究次第でしょうね。

 できる事なら好きでもない男とは寝たくないですからね。

 一緒に生活しているうちに情愛が生まれればそれが一番なのですが、こればかりは実際に生活してみないとどうなるか分かりませんからね。


 まあ、今はまず恨みを晴らすのが先ですね。

 私を騙した連中にはそれ相応の罰を受けてもらわなければね。

 前世なら人権屋の連中にやり過ぎと言われるでしょうが、それは実際に自分や自分の大切な人が殺されかけた事がないからです。

 他人の痛みを軽く見て、いえ、犯罪者の権利を言い立てて自分の利にしようとしているから、被害者と被害者家族を踏みにじるような事を平気でやれるのです。


 さて、デルフィーヌとディアーヌを殺したのと同じ術殺をしてあげましょう。

 国王にはデルフィーヌとディアーヌは流行り病で死んだと言ってあります。

 ラッセル伯爵家の屋敷にいる者全員が同じ症状で死んでも、プランプター公爵家を手に入れたい国王は流行り病だと思い込んでくれるでしょう。

 内心では疑っていても、何も言わないでくれる事でしょう。


 ただできるだけ呪殺の証拠は残さないようにしないといけません。

 呪いで直接殺すのではなく、呪いが行った身体への影響で死ぬようにする。

 本当は呪いに疫病を運ばせるのが一番証拠を残さないのですが、それではラッセル伯爵家だけでなく王都中に疫病が蔓延してしまいます。

 私の不完全な良心がそれを許しません。

 前世の祖父母両親に顔向けができないような事はできません。


 だから、感染しない形で疫病に見える呪いを放ちます。

 呪いに内臓や脳に膿を運ばせて死なせるのです。

 できるだけ疫病と同じ症状で死ぬようにする。

 呪いに内臓や脳を直接腐らせると、呪いだと気がつく術者がいるかもしれませんから、体力がある者が生き残る可能性はありますが、仕方がありません。


 ★★★★★★


「聞かれました、エメラルダ夫人。

 ラッセル伯爵家が主従全員疫病で死に絶えたそうですわよ」


「怖いですわね、使用人達にできるだけ街に行かないように厳しく命じなければいけませんね、ミレニア夫人」

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婚約者は爵位狙いの悪党でした。 克全 @dokatu

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