第3話:軍資金・エレオノール視点

「これを売るとしたらいくらになるかしら、マスター。

 マスターの値付けによっては他のギルドに売るか、商会に直接売らなければいけなくなりますから、あまりおかしな値付けはしないでくださいね」


「重々承知しております、エレオノール様。

 もう何度もエレオノール様とは取引させていただいておりますから、下手な値をつけたら蔑まれる事は骨身に染みて理解しております」


 以前から商業ギルドには創り出した宝石を売りに来ていますから、マスターの性格は十分に理解しています。

 一度こちらを騙すような値付けをしたので、商業ギルドを通さずに、直接宝石を扱っている大商会に創り出した宝石を売ってやりました。

 それ以来マスターも舐めた真似はしなくなりましたが、油断大敵です。


「ではこのダイヤモンドを一つ一つ値付けしてください。

 私も時間がありませんから、マスターの付けた値段が気に入らない場合は、直接宝石商会に持ち込みますよ。

 場合によっては他国の商業ギルドや王都以外の商業ギルドに持ち込みます。

 なんなら大陸中の宝石商を集めてオークションを開いてもいいのですよ」


 私が脅かすとマスターが緊張するのが伝わってきました。

 時間をかけて私と交渉してできるだけ下限で買いたいと思っていたのでしょう。

 私がとても暇ならそういう遊びもありかもしれませんが、今は急ぐのです。

 舐めた真似をしたらそれ相応の報復をさせてもらいます。


 ★★★★★★


「エレオノール様、この通りでございます。

 今一度私に機会を与えていただけませんでしょうか」


 本当にこのマスターは懲りないですね。

 一番売り易い大きさのダイヤモンドは想定通りの値付けをしていたのですが、一番買取価格が高価になりそうな大粒のダイヤモンドを買い叩こうとしました。

 その時点で売買交渉は打ち切りです。

 普及サイズのダイヤモンドは約束通り売りますが、同じく約束通りこれで売買交渉は終わりです。


「文句があるのなら、先に値付けしたダイヤモンドも売るのを止めますよ。

 最初に厳しく言ってあったはずですよね。

 私を騙すような真似は絶対にするなと。

 プランプター公爵家の令嬢を騙して宝石を買い叩こうとしたのです。

 それもこれで二度目です。

 この件に関してはキッチリと社交界に広めさせていただきます。

 控室の護衛は動かない方がいいですわよ。

 プランプター公爵家の伝わる呪殺具が、既に商業ギルドにいる全員を狙っていますから、一歩でも動けば皆殺しですよ。

 騙し損ねた私を殺そうとした件に関しても、社交界に広めさせてもらいます」

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