綺耳學

　耳に綺麗な石を入れて蓋をして過ごすことで世の中から少しずつ身体が乖離して、ちょうど百日目にはどこかよくわからない別の場所へ行けるという話が流行り、みな荒唐無稽なうわさ話だと表向きは一笑に付しているけれど、このところ聴覚不全から来る不注意で事故死する人の数が増えていること、彼らの殆どが死後に耳から色とりどりの宝石を零すことから、実際は思っている以上に多くの人々が奇怪な彼岸の話に心囚われて生活しているのだと思われる。