真夏の君と白のキャンバス
桔梗透
プロローグ
心地よい風がカーテンを揺らして、光と影が二人でゆらゆら踊ってる。
海鳥の鳴き声に目を覚ました僕は、じっとその光を見つめてた。きっとそれに意味は無いのに、なんだか大切に思えてしまったから。
しばらくして服を着替え、机の中から真っ白なキャンバスを持ち出して家を出た。
行先はわかってる。
もう何度も通った道。
やけに空白が多いバスの時刻表。
廃れたアイスクリームの看板に、錆びた赤いポスト。
時々風鈴の音が聞こえては、遠くに消えていく。
最初はなんだか大切なものに見えたはずなのに。
今では何も感じない。
でも、僕の目は無意識にその姿を追っている。
海に面した山道に沿って歩いていくと、古びた小さな神社が見える。境内に溢れた枝葉の間から光が差し込んで、神秘的な雰囲気を醸し出してた。
お社の脇を通って裏に回ると奥に続く抜け道があって、鬱蒼と茂った林の中を突き抜けた一本道が僕を誘う。
その先に進むと広大な海を一望できる崖があって、僕はその真ん中で腰掛けた。
そして、海をじっと見つめる。
どこまでも続くように見えた水面。
きっと水平線の向こうに終わりがあると思うと、なんだか安心した。
波が引いて、また戻ってきて。
その動きに心を重ねて、僕も揺られてみる。
連れ去られて。
流れ着いて。
どこかへ導いてくれないかな。
真っ白な僕の心に色をつけて欲しかった。
光が織り込まれた綺麗な青のグラデーション。
そんな色に染まりたかった。
そう思いながら今日も一日が過ぎていく。
なんだか、僕の心だけが遠く離れてる気がした。
真夏の君と白のキャンバス 桔梗透 @books2525
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