ここまでぶっ飛んだ物語は他にない。そう断言できるほどのクオリティ。精緻な文章に加え、くどくないユーモア。シリアスな場面はシリアスに、笑うべき場面は笑わせに。それが徹底されていてグダることのない場面展開。よく練られたストーリーは純粋に面白く、1度読み始めてしまえば続きを読みたい気持ちが抑えられなくなることだろう。そしてこの作品のなによりの魅力は、群を抜いて光り輝く圧倒的変態性だ。貞操逆転系にありがちな『無闇なエロ要素の多用』をすることのない作者の姿勢に尊敬の念を禁じ得ない。丁寧に描写された『"正しく変態"なキャラクター達』は、もはや狂気を感じさせるほどに愛おしく、見ていてとても心地よい。
変態とは無意味に安売りされたエロスではない。
しっかりとした背景があってこそ、真に変態なのである。
そのことを正しく教えてくれるこの物語は、もはや聖書だ。
まず間違いなく読んだ者の世界観、価値観を変え、より良い人生を生きて行くための道標となってくれるだろう。
読み始めたきっかけは、書籍化に際してのキャラデザのツイートを見て「うお……デッカ……」となり、こんなにでっけえ女ばかり出てくる小説って一体なんなんだと思っての事でした。
最初こそあまりの馬鹿馬鹿しい内容に辟易する事もありましたが、読みやすいのでついつい読み進めていくうちに、それすらも魅力の一つとして感じている(実際にそうなのですが)自分がいました。
そしてとうとう、冷めた目で見ていたはずの物語に対して手に汗を握り、先程までは感動の涙すら流していました。
寝る前に少し読みたかっただけなのに、既に空は明るく、鳥と蝉が鳴いています。解せぬ。
ともかく、この物語はとある男のしょうもない独白から始まり、様々なしょうもない人々の『アホくさ』としか言いようがない思惑をクソ真面目に描きつつも、己の生まれながらにしての地位や築き上げてきた名誉、あるいは他者に対してのどうしようもない憎しみや限りない愛情もまた大真面目に語る、アンバランスのように思えてバランスがきっちり取れている名作です。
今回どうしてもこの思いを伝えたくてレビューを書きましたが、実はマルティナ覚醒編までしか読んでいないので、これからどうなるか楽しみです。
長々と書きましたが、最後にこれだけは言わせてください。
睡眠時間返せ。