母の愛と、メメント・モリ

表題とした2つの要素は、紛れもなく本作「貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士」の根幹となるメインテーマです。
一見するとタイトルと噛み合っていませんが、物語の舞台が男女比1:9の逆転世界であり、世界の主役が女性であることで、現実と比較すると「母」の存在が強く強調される下地になっているように思います。(もちろん単に作者様の趣味嗜好だという理由も大きいと思いますが)

母の愛とメメント・モリ。
この2つはもう作中にこれでもかと散りばめられており、読み進めていけば自然と、本当に胸が痛いくらいに伝わってきます。
故人が残した想い、残された者が伝えられなかった言葉。果たされなかった約束や、ゆえにこそ成すべきこと。狂おしいまでの感情を胸に抱いて生きていく、魅力あふれる様々な登場人物たち。
その哀切の一端は、主人公ファウスト・フォン・ポリドロ卿が作中で次のように表しています。

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「相手が死してなお想う事で、亡き相手に届く愛があるのかもしれませぬ」

そうでなければ。
 
「余りにも悲しすぎるではありませんか。そう考えます」
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母の愛を想え。
死を想え。
ゆえに、今を生きよ。

本作は、そういうお話しであると感じます。
ですが勿論ただ物悲しいだけはなく、心震わせる英傑譚にして騎士道物語でもあります。
全てを引っくるめて、膨大な熱量を発する極星のようなヒューマンドラマであります。



まあでも、ケルン派は頭がおかしいし、ポリドロ卿はちんこが痛いねんな……。