マスター
「
「そうなのよ、マスター聞いてくれる?」
「はい、聞きますよ」
「あのね――、」
私はマスター、この場所はなぜか悩みを抱えた人が訪れる。
私の人柄なのか、この店の雰囲気なのかそれは分からない…
「マスター酷いと思わない?」
「そうですね…人の数と同じぐらい考え方もありますからお互いに妥協点を見つけて歩み寄る事が大切ですよ」
「マスターは相変わらずね…美味しい」
彼女は広い海をイメージしたカクテル、『オーシャンブルー』を口にしてそう言った。
すると、カランコロンと音をたててお店のドアが開く
「いらっしゃい」
「マスター久し振り」
「お久しぶりですね、
竹林さんがカウンターに座ると私はカクテルを作り始めた。
シャカシャカとシェイカーをリズミカルに振る。
「どうぞ」
竹林さんに淡い紫色のカクテル『淡い恋』を竹林さんの前に置いた。
「マスターこれは?」
「『淡い恋』って名前のカクテルです。竹林さんは恋のお悩みを抱えているようなので」
「マスター流石だね…」
そう言って竹林さんはカクテルを口にする。
「うん、美味しい、ところでマスター聞いてくれるかい?」
「ええ、喜んで」
私が笑顔で答えると竹林さんは話始めた
「―――、と言う分けなんだよ…」
「なるほど、竹林さんは裏切られたんですね…」
「そうなんだよ、結婚の約束もしてたのに…」
「その人はクソね」
持っていたカクテルを飲み干してグラスを置いた宮部さんがそう言って話を挟むと竹林さんが宮部さんを見る
「えっと、貴女は?」
「私?私は、
「おやおや、宮部さん盗み聞きは良くないですよ」
「だって聞こえてくるんだもん」
「まぁまぁ、せっかくだから宮部さんも一緒に飲みましょうよ。今日は飲みたい気分だからね」
「奇遇ね、私も同じ気分なの」
宮部さんは席を立つと竹林さんの隣に移動してした。
「マスター彼女にカクテルを」
「あなたの奢りよね?」
「もちろん、自己紹介まだでしたね。私は
「うん、こちらこそ」
私は竹林さんの注文を受けてカクテルを作り始めた。
その間二人はお互いの事を話し合い楽しそうにしていた。
「どうぞ」
「マスターありがとう、でね――」
宮部さんは私にお礼を言うとすぐに竹林さんに話始める
宮部さんが元気になられて良かったです
しばらく二人はいい雰囲気のまま話を続ける。
グラスを拭く私はそんな二人を見つめていた。
いい雰囲気ですね
私はシェイカーを振ってカクテルを作り始める
グラスを二つ用意して出来上がったカクテルを注ぎ二人の前に置いた
「どうぞ」
「マスター、注文してないよ?」
竹林さんは首を傾げる
「お二人がいい雰囲気なのでサービスですよ」
「なっ!?」
慌てる竹林さんを他所にカクテルの説明をする
「こちらは燃え上がる恋をイメージしたカクテル、『赤い情熱』です」
私が説明をする前にすでにグラスを持ってカクテルを飲み始めていた宮部さんが口に含んだカクテルを吹き出してしまう。
「宮部さん、跳ねましたよ?」
「ご、ごめんなさい、でもマスターが変な事言うからだからね!」
顔を真っ赤にする宮部さんは恥ずかしそうな表現をしていた
そうな宮部さんを竹林さんが見つめる
おやおや、これは始まりそうですね
時間が経ち、閉店の時間が近づいてくる
「そろそろ、おいとましよう」
「しょうね、明~、抱っこ!」
すっかり酔ってしまった宮部さんは竹林さんに甘えている
「愛ちゃんはしょうがない子だね」
「へへへっ」
まるで恋人同士の様な雰囲気の二人を送り出すと、その後ろ姿を私は微笑ましく眺めていた
数日後、再び竹林さんがお店にやってきた。
竹林さんがカウンターに座ると私はカクテルを作り始めた
黄金色のカクテル、『輝く未来』をグラスに注ぐと竹林さんの前に置いた
「これは?」
「『輝く未来』、竹林さんのこれからに」
私は竹林さんに笑みを見せる
「本当、マスターには敵わないよ…実は、あの後愛ちゃんと付き合う事になったんだよ」
「おめでとうございます」
「マスターのお陰でだよ、こちらこそありがとう」
「私は、何もしてませんよ」
「はぁ、全くマスターは…」
タメ息を吐いた竹林さんはカクテルを口にする
「うん、美味しい」
「ありがとうございます」
竹林さんはしばらく私と話をした後に帰って行った。
今日はいい日ですね
気分の良くなった私は自分にカクテルを作る
出来上がったカクテルをグラスに注ぐとグラスを持ち上げ、竹林さんと宮部さんの幸せに乾杯をした。
私はマスター、皆様のお越しを心よりお待ちしております。
マスター 完
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